充電池やスーパーキャパシタなどの電気化学蓄電デバイスは「たくさんため込む」と「速く出し入れする」が両立しにくい。電極を厚くすれば活物質が増えて容量は伸びるが、電極の奥までイオンが届かず充放電速度が落ちる。米ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の研究チームは、「噛み合う指」状の3Dプリント電極設計でこのトレードオフを越え、従来比で蓄電容量を約2倍に伸ばした厚さ5.8mmの蓄電デバイスを試作した。論文は学術誌「Materials Horizons」に掲載された。
研究チームの問題意識は、従来の板状(スラブ状)電極の構造的な無駄にある。共著のGiovanna Bucci氏は「板状の設計では、イオンが奥まで届かないせいで電極材料の多くが使われずに『デッドゾーン』ができ、界面付近に抵抗損も集中する」とコメントしている。チームは設計最適化のフレームワークと実験データを組み合わせ、櫛歯が互い違いに噛み合うようなインターディジテイテッド構造の4mm電極をマルチマテリアル・マイクロステレオリソグラフィで造形した。
製造は2段階で進む。まず多孔質のグラフェン酸化物をベースとして印刷してイオン拡散経路を確保し、その上に金の薄層を堆積させて電子伝導性を底上げする。指型に絡み合う3D構造はイオンと電子の出入り口を多面的に配置する役割を果たし、奥まで反応が届かない領域を排除する設計だ。共著のThomas Roy氏は「電極のアーキテクチャーは、材料そのものと同じくらい性能を左右するレバーだ」と、構造設計の重要性を強調している。
最適化された電極は容量を約2倍に伸ばした一方、充電速度と信頼性は維持された。電気自動車や系統用蓄電など実用条件下での厚膜電極の有力解として位置付けられる。研究チームは同じ最適化フレームワークを、リチウムイオン電池、伸縮性電池の化学機械協調設計、電気化学フローバッテリー、電気化学的な鉱物分離など他のデバイスにも展開する計画を表明した。