HVACの配管を飛び回ってガス漏れを探す小型ドローン。そんな用途を想定したSLAM(自己位置推定と環境地図構築の同時実行)チップを、MITの研究チームが開発した。消費電力はわずか約6ミリワットで、LED1個分に相当する。2026年6月23日にMIT Newsで発表された。
通常、ロボットが周囲の3Dマップを作るには、カメラ画像をボクセル(3D画素の立方体)に変換して障害物の位置を記録する。ボクセルは大量のメモリーを消費し、1フレームの全ピクセルを何度も処理するため電力がかかる。手のひらサイズのドローンが搭載できるバッテリーでは、到底まかなえない計算量だ。
MITの研究チームはボクセルの代わりに、ガウシアン(楕円体)で障害物を表現する手法を採用した。楕円体はサイズ、形状、密度を滑らかに調整できるため、曲面を持つ配管や壁を少ないデータ点で効率的に表現できる。立方体のボクセルで同じ精度を得ようとすると、はるかに多くの格子点が必要になる。ガウシアンの数は障害物の複雑さに応じて動的に増減し、必要な精度を保ちながらメモリーの無駄を抑える。
このアルゴリズムを高速に実行する専用ハードウェアをシステムオンチップ(SoC)として設計した。ガウシアンマップは障害物だけでなく、ロボットが安全に通過できる自由空間も同時に記録する。自由空間の情報がなければ、ロボットは「どこが安全か」を判断できず、ルートを計画できない。ボクセル方式で両方を記録するとメモリーが膨大になるが、ガウシアン方式なら大きな空間を少ない楕円体でカバーできる。
従来のSLAMシステムは数ワットの電力を消費し、Raspberry Piやデスクトップ級のプロセッサーを必要とする。6ミリワットで動作するこのチップなら、手のひらに載る小型ドローンにも搭載でき、バッテリー寿命を大幅に延ばせる。工場のHVAC点検、下水管の損傷調査、災害現場の建物内部の確認など、人が入れない場所で自律飛行するロボットに道を開く技術だ。