米Niron Magneticsが2026年8月7日、レアアースを使わない永久磁石の量産工場をめぐり、米戦争省(Department of War)のOffice of Strategic Capital(OSC)から最大1億5000万ドル(約237億円)の融資を条件付きで受けると発表した。返済期間は20年に及ぶ。ミネソタ州サーテルに建設中の工場は2027年の稼働を予定し、レアアース不使用の永久磁石を年間最大1500トン生産する。OSC側も同日、条件付き融資の署名を公表した。
永久磁石はモーターの心臓部にあたる部品で、ロボットやドローン、電動工具、データセンターの冷却ファン、家電のスピーカーまで幅広く使われる。強力な磁石の大半はネオジムやジスプロシウムといったレアアースを含み、その加工は海外に集中している。個人が電子工作でモーターを回す場面でも、価格や入手性はこの供給網に左右されてきた。
同社の磁石は窒化鉄を使う。鉄と窒素という、どこでも手に入る材料だけで作るため、レアアースの分離・精製の工程を通らない。技術の元はミネソタ大学の研究で、同社は13年をかけて量産に近づけてきた。OSCは発表で、レアアースを使わないにもかかわらず、レアアース磁石と同等か、一部の性能や物性では上回ると位置づけている。
規模の飛躍は大きい。同社は米エネルギー省のARPA-Eと組んだ2年間のパイロットで、年1〜2トンの製造にとどまっていた。サーテル工場の生産能力はその1000倍近くにあたる。延べ床面積は約2万6700平方メートルで、材料の製造から磁石の加工までを1カ所にまとめる。総工費は6億500万ドル(約955億円)で、最大175人の常勤雇用を見込む。
サーテル工場は第1工場という位置づけで、同社は年産1万トン規模の第2工場の立地選定を進めており、2028年の着工を見込む。永久磁石の世界需要は現在の約28万トンから2035年には60万トンを超えると同社は予測する。OSCは今回の融資の狙いとして、AI基盤や防衛、自動車、産業自動化、航空宇宙、エネルギーといった分野を支える国内の生産基盤の強化を挙げる。同機関は2026会計年度に84億ドル(約1兆3000億円)を超える融資を決め、官民から178億ドル(約2兆8000億円)を超える資本を動かしたとしている。ただし今回の融資は条件付きで、OSCによるデューデリジェンスの完了や、同社が一定額以上の自己資本を確保することなどを満たすことが前提になる。