独シュトゥットガルト大学とマックス・プランク固体研究所の研究チームが、磁石を近づけると巻きがほどけ、遠ざけると自分から巻き戻るセラミックの微小な巻物を開発したと2026年8月12日に発表した。手本にしたのは、チョウが蜜を吸うときに伸ばす口だ。成果は学術誌『Advanced Materials』に掲載された。
小型ロボットや、柔らかい素材で作るソフトロボットには、物をつかんだり動かしたりする駆動部品が要る。ただ、装置そのものが小さくなるほど、また柔らかさを保つ必要があるほど、既存の部品では条件を満たしにくくなる。研究チームを率いるZaklina Burghard氏は、駆動部品を1つ増やしたのではなく、極めて薄い機能性の膜を数秒で立体的なセラミックの巻物に変える製造の仕組みを作ったのだと説明する。
作り方は単純だ。五酸化バナジウムに磁性を持つ酸化鉄のナノ粒子を混ぜた極薄の膜を作り、かみそりの刃で基板から静かに剥がす。刃はかんなのように膜を曲げ続け、膜は数秒のうちにきつく巻かれた状態になる。ここに磁石を近づけると素早くほどけ、磁石を離すと元のらせんに戻る。ほどけてから戻るまでの一往復にかかる時間は、およそ150ミリ秒だ。
一般的なセラミックはもろいが、この膜は曲げに耐える。生物に学んだ階層的な構造がナノからマイクロの尺度で組み上がっており、材料としてのまとまりを保ったまま弾性的に変形できる。
寸法は、幅が数マイクロメートル、巻いた状態の直径が数百マイクロメートルにとどまる。ほどくと長さは最長25mmに達する。試験では5000回の動作を経ても正常に働き、自重の30倍を超える荷重を動かした。基板の上に複数を並べて同時に動かすこともでき、微小な物体を持ち上げたり運んだりする協調動作に使えるという。
材料に五酸化バナジウムを選んだのは、Burghard氏が長年扱ってきて土台にしやすかったためだ。同氏は、駆動部品は出発点にすぎず、本当の成果は巻き取りの製造手法そのものにあると述べる。有機・無機を問わず多くの薄膜材料に応用できるとしており、小型ロボット以外にも電子部品やセンサー、蓄電デバイスへの展開を見込む。研究は2023年、Semi Kim氏が修士論文で進めた実験を土台としている。