
東京都立大の研究から生まれ、製品化を一度断念したプロダクトが、13年越しに新たな形で世に出ようとしている。
DOT P(代表取締役:金井隆晴氏)は、ソレノイド駆動の楽器ロボット「PONKEY(ポンキー)」を米テキサス州オースティンで開催中の「SXSW 2026」(2026年3月12〜14日)にて世界初公開した。2027年の一般発売を目指して開発を進める。
PONKEYは16個の独自設計ソレノイドキーを搭載した楽器ロボットだ。キーを押すと光り、音が鳴り、物理的にポンと飛び出す。ステップシーケンサー型のドラムマシンとしても、デジタルシンセサイザーとしても演奏できる。さらに専用アプリと連携することで、AIが自律的に音楽を演奏するデバイスとしても機能する。人とAIがキーの物理的な動きを通じて非言語的に対話するための楽器、というコンセプトだ。
金井氏は2010〜2012年頃、当時首都大学東京(現・東京都立大学)の串山・馬場研究室(IDEEA Lab)で、形のないデジタル情報に物理的な形を与えて操作する「タンジブルインターフェース」の研究を行っていた。その中から生まれたのが「PocoPoco」というプロダクトで、2013年にはCEATECにも出展した。しかし量産・製品化の壁は高く、そのまま実装まで至ることはなかった。
金井氏はPocoPocoを保留にしたまま、シャープへの就職を経て2014年にPocoPocoを共に開発していた菊川裕也氏の誘いを受けてOrpheの共同創業に参加。約10年にわたりスマートシューズの開発に関わりながら、近年は子どものアントレプレナーシップを育てるものづくり支援の仕事も手がけるようになった。その活動の中で感じたのが、「言葉がうまく使えない子供はAIの恩恵を受けにくい」というもどかしさだった。言葉に頼らなくても、人もAIも一緒に触れて遊べる楽器にしたい——その発想がPocoPocoのリデザインというアイデアと結びつき、2025年3月にDOT Pを設立、4月から本格始動した。
「今だからできる」と判断した理由を、金井氏はFabSceneのインタビューでこう話してくれた。
「当時は1000万円ぐらいの3Dプリンターを使っていましたが、今は数万円で買えますよね。ソレノイドも大学で50万円ぐらいのコイル巻き機を使っていたのが、今はAmazonで5万円で手に入る。基板はオンラインで簡単に発注できて、コードはほぼ100%AIに書いてもらっています」。
金型を使わない小ロット製造の見通しが立ち、コストを急激に増やさずに事業を進められるという実感が後押しになったという。金井氏が学生時代に所属していたIIDEEA Labを率いる馬場哲晃氏も、PONKEYの開発にも関わっているという。

PocoPocoのリデザインからスタートしたPONKEYだが、コンセプトの確立に半年以上を費やし「子供も大人もAIも」というコピーに辿り着いた。
現在、DOT Pは東京都のスタートアップ支援プログラム「TOKYO SUTEAM」協定事業「FFF Tokyo(Fabrication Factory Founding Tokyo)」の採択プロジェクトとして開発を推進している。2026年3月28日にはTiB(Tokyo Innovation Base)でFFF Tokyo Demo Dayが開催され、PONKEYを含む採択プロジェクトの成果発表が行われる予定だ。

写真提供:金井隆晴氏
※記事初出時に誤記がありました。訂正してお詫びします(2026年3月13日9時00分)

