木の葉の構造を模した電子皮膚、義肢の感覚再現に道──フィンランド・トゥルク大

FabScene(ファブシーン)  Gloved finger points at a gray modular robotic hand with joints inside a case.

木の葉の葉脈は、太い幹線から細い枝へと同じ模様を繰り返しながら広がっていく。この「フラクタル」と呼ばれる構造は、軽くて丈夫で、表面積も広い。フィンランドのトゥルク大学の研究チームは、この自然界のデザインをそっくり写し取って、伸び縮みできる電子皮膚を作り上げた。同大学は2026年4月23日、Vipul Sharma材料工学准教授の研究グループと、Anastasia Koivikko自動化工学准教授によるソフトロボティクス研究の取り組みをオンラインマガジン「Aurora」で紹介した。

研究チームが目指したのは、伸縮性・通気性・導電性・透明性を兼ね備えた電子材料だ。Sharma氏は「私たちは高い性能を狙いつつ、環境に優しい材料だけを使っている。開発した電子材料は伸ばせて呼吸でき、電気を通し、しかも透明だ」と説明する。実証として、研究チームは新材料で電子皮膚を作り、ロボットハンドの指先に装着した。皮膚に組み込まれた感圧センサが接触に反応し、ロボットが触覚情報を得られることを確認したという。

技術の中身は、Sharma氏の研究グループが2025年2月にnpj Flexible Electronicsに発表した論文「Biomimetic freestanding microfractals for flexible electronics」に詳しい。チームはインド菩提樹(Ficus religiosa)の葉骨格をテンプレートに使い、改良したエレクトロスピニング法でナイロン6ポリマーを吹き付けて転写する手法を考案した。葉の微細フラクタル構造を約90%の精度で複製し、80%超の透過率と良好な伸縮性・通気性を持たせた自立型のシートを得たとしている。表面に銀ナノワイヤを塗ると、表面抵抗は約20Ωまで下がり、触覚センサや加熱素子、電子皮膚にそのまま組み込めるという。

応用先として研究チームが見据えているのは義肢とソフトロボットだ。電子皮膚を組み込めば、義肢を装着した利用者が圧力・温度・湿度を感じ取れるようになる可能性がある。また柔らかいロボットは、病院での患者の搬送やリハビリ、工場での壊れやすい物の取り扱い、地下や宇宙といった人間が入りにくい環境での作業に向くとされる。Koivikko氏は「患者を支援するロボットは柔らかいことが大切。安心して使えて、安全に動く必要がある」と話す。研究グループはさらに、シリコーン部品をフィンランド産木材から得たバイオマス由来の素材に置き換える研究も進めており、電子部品の輸入依存を減らす狙いがある。

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