
市販のサーマルカメラは数万円から十数万円する。中身を自分で組めるなら、必要な機能だけを選んで設計できるはずだ。ドイツの開発者Daniel Kampert氏(reddit上のハンドル名はkampi1989)が、ESP32-S3を中核にした自作サーマルカメラ「PyroVision」のプロトタイプを2026年4月10日頃にreddit r/arduinoで公開した。回路設計、ファームウェア、PC側制御アプリ一式をGitHubのPyroVision-ThermalCam Organizationに、GPL-3.0で公開している。
ハードは2枚構成。メインボードにはFLIR製Lepton 3.5、PSRAM 16MB/フラッシュ32MBのESP32-S3、未統合のOV5640可視光カメラ、ToFセンサー、温度補償用センサー、LiPoバッテリー、フューエルゲージ、充電回路、USB-C、PWMドライバ、フラッシュ用LED 2個、RTC、SDカード、電源管理ICが載る。ディスプレイボードはタッチディスプレイ、ボタン4個、方向パッド、ステータスLED。コスト圧縮のため手はんだで組み、1週間ほどのデバッグに費やしたという。
ソフト側はLVGLでGUIを描画し、USB上でMSC(写真ストレージ)、UVC(ウェブカメラ)、CDC(シリアルコンソール)の3クラスを同時に動かす。Wi-Fiプロビジョニングやリモート制御も用意された。Kampert氏は開発中、Espressif公式のesp-iotコンポーネントとesp-tinyusbが共存できないと気づき、両者を統合するパッチをesp-usbにPull Request #408として送った。本人いわくEspressifへの初コントリビューションで、現時点ではDraftだ。
開発の苦労も率直に語る。「ボタンのハードウェアデバウンスを省略してI/Oエキスパンダーのラッチ機能で代用しようとしたが、これが間違いだった。後からキャパシタを追加で付ける羽目になった」。設計データはKiCadで記述し、リリース時にCI/CDがPDFを自動生成してGitHub Releasesに置く運用も整えた。映像のグラス・ツー・グラスレイテンシは、Lepton 3.5が9 FPSで動くため「体感で200ミリ秒程度」とredditで説明する。次は可視光カメラの統合と専用エンクロージャー設計、ソフト拡充を進める計画だ。

