米フロリダアトランティック大学のErik Engeberg氏らの研究チームが、利用者一人ひとりの体に合わせて動く義手の制御システムを開発した。3Dプリントで作る装着スリーブに、柔らかい磁気センサーを埋め込み、各利用者専用に訓練したAIが筋肉の動きを義手の動作に変換する。成果はIEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineeringに掲載された。
従来の義手は、決まった形の装置を利用者が使いこなす必要があった。だが、筋肉の動き方は人によって異なり、汗や皮膚の状態、その日の調子によっても揺らぐ。研究チームは、装置に人を合わせるのではなく、人に装置を合わせる考え方で、この課題に取り組んだ。
仕組みは、残った腕を3次元でスキャンするところから始まる。その形に合わせて、装着するスリーブを3Dプリントで作る。スリーブには、柔らかく曲がる磁気センサーを、体格や腕の形に応じて18個または24個埋め込む。センサーは肌に密着し、手や手首を動かそうとするときの、筋肉の形や圧力の細かな変化を捉える。
捉えた変化を、義手の動きに変えるのがAIだ。あらかじめ用意した共通のデータではなく、利用者それぞれの筋肉の動きのくせを学んだ専用のAIモデルを使う。これにより、手や手首の動きを、その場で義手の操作へと移す。
研究チームは、上肢を切断した3人を含む10人で、この仕組みを試した。システムは、手と手首の19種類の動作を識別し、繰り返し使っても安定した結果を示したという。センサーの耐久性を調べる試験では、機械で7500回を超える力を加えたが、力とセンサーの信号の対応は保たれ、性能の目立った低下は見られなかった。
Engeberg氏は、義手の制御に万能の形はなく、一人ひとりが解剖やけがによって異なる動きの特徴を持つと述べている。3Dプリントの装着具と個別のAIを組み合わせることで、利用者の意図に自然に応える義手に近づくとしている。