中国科学院寧波材料技術・工学研究所などの研究チームが、押された強さに応じて色が変わるトランジスタを開発した。ロボットハンドに組み込んで物をつかませたところ、握った圧力の分布がそのまま色の模様として浮かび上がり、その画像から物体の形を98.4%の正確さで識別できた。成果は2026年7月24日、学術誌『Advanced Science』にオープンアクセスで掲載された。
ロボットが触覚を得るには通常、センサーで信号を集め、中央の処理装置へ送って解釈し、必要なら別途用意した画面に表示する、という手順を踏む。センサー・処理・表示が分かれているため、部品も配線も増え、応答も遅れる。研究チームが手本にしたのはカメレオンの皮膚だ。カメレオンは、情報を受け取る、処理する、色を変えるという3つを皮膚1枚でこなす。
開発した素子は、有機半導体P3HTを電流の通り道とし、その上をイオン液体を含むゲルで覆った構造になる。電圧をかけるとゲルの中のイオンがP3HT側へ移動し、電気の流れやすさが変わると同時に、膜の色が紫から透明へと変化する。電圧を逆にかければイオンが引き抜かれ、元の色と状態に戻る。波長520nmの光の吸収率は、電圧をかけると36.3%から18.9%まで下がった。
この素子は、生き物のシナプスに似た振る舞いも示す。電気信号を1回加えると電流が跳ね上がり、約1.5秒かけて元に戻る。短い間隔で2回目を加えると、1回目のイオンが残っているため反応が強まる。信号の強さや頻度を変えると、色の濃さもそれに応じて段階的に変わる。つまり、直前に受けた刺激の記録が色として残る。
チームはこの素子を4×4の格子状に並べ、圧力センサーと直列につないだ。指が物に触れてセンサーの抵抗が下がると、トランジスタにかかる電圧が上がり、その場所だけ色が変わる。球を握れば中央の2×2の範囲が、円柱なら2×4の帯状に、円錐ならT字型に色が変わった。押された場所と強さが、そのまま2次元の模様になる仕組みだ。この画像を畳み込みニューラルネットワークに学習させたところ、40回の反復で正解率98.4%に達した。
モールス信号を表示する実験も実施した。250ミリ秒の短い信号を「トン」、750ミリ秒の長い信号を「ツー」に割り当てると、色の濃さの差で両者を見分けられる。4×4の格子に「UCAS」の4文字を入力し、模様として読み取れることを確かめた。
課題も明記されている。ゲル内のイオンの移動には偶然性が残り、P3HTへの染み込み方にむらが出る場合がある。素子の界面や配置の設計も、信号の一貫性を高めるために改良の余地があるという。チームは今後、ゲルの組成や素子の構造を調整し、封止の方法を確立して、より大きな格子へ広げることを目指すとしている。