韓国のKAISTが2026年8月19日、水を電解液に使う亜鉛イオン電池で、亜鉛イオンと水素イオンを順番に貯め込む電極材料を開発したと発表した。水素イオンはこれまで電池の性能を落とす邪魔者と見なされ、反応を抑える研究が主流だった。順番を制御することで、その水素イオンを蓄電に使い、容量を上乗せする。開発したのは、化学科のSarah S. Park教授が率いる研究チームだ。
水系の亜鉛イオン電池は、電解液に水を使うため発火の危険が小さく、材料も安く環境への負荷も軽い。大規模な蓄電システムの次世代候補として注目されている。ただし亜鉛イオンは電気を2つ分運ぶ2価のイオンで、電極の中を動く速度が遅い。そのため、たくさん貯めることと素早く充放電することの両立が難しかった。
水素イオンは正反対の性質を持つ。極めて小さく速く動くので、電荷を運ぶ役としては理想的だ。ところが電極に入りすぎると表面に副生成物ができ、亜鉛イオンの通り道をふさいで性能を落とす。
研究チームは、水素イオンの反応を抑え込むのではなく、入る順番を決める方向に進んだ。2次元の導電性MOFという、金属と有機分子をつないで微細な穴を無数に作った材料に、アミノ基を組み込む。組み込んだ官能基は、特定の電圧に達したときだけ水素イオンと反応する。結果として、電圧の高い領域ではまず亜鉛イオンが貯まり、電圧が下がるにつれて水素イオンが追加で貯まる。
研究チームはこの仕組みを、空き瓶にまず大きめの小石を入れ、残った隙間に細かい砂を流し込む作業にたとえる。大きい亜鉛イオンを先に収め、小さい水素イオンで隙間を埋めるため、電極を無駄なく使える。水素イオンが先に反応すると副生成物ができて亜鉛イオンの動きを妨げるので、順番そのものが性能を左右する。
作った「Cu3(HHTATP)2」という材料は、0.5A/gの条件で368.7mAh/gの容量を示した。充放電の速度を16倍に上げても初期容量の46.9%を保ち、500回を超える急速な充放電の後も安定して動いた。X線を使った複数の分析で、亜鉛イオンが先、水素イオンが後という順序と、水素イオンを貯めて放す動作を繰り返せることを確かめた。
Park教授は、性能を落とす厄介者と見られていた水素イオンをより多くの蓄電に使えると示した点に意義があると述べ、同じ原理をほかの電極材料にも当てはめれば、大量の電気を素早く貯められる電池の開発につながると見込む。論文はGeunchan Park氏とGyuwon Lee氏を共同筆頭著者として学術誌Chemに2026年7月7日付で掲載された。