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チャンバー不要の耐熱PLA「HT-PLA Pro」、85℃で衝撃耐久9.7倍

Polymakerは、耐熱性を高めたPLAフィラメント「HT-PLA」の強靭版となる「HT-PLA Pro」の販売を始めた。2026年7月29日に公開した技術解説で、自社で組んだ試験装置による耐久試験の結果を明らかにしている。18色を用意する。

HT-PLAは、通常のPLAが60℃前後で軟らかくなる弱点を解消した材料だが、割れやすさと層間の剥がれが課題として残っていた。HT-PLA Proはそこに手を入れ、ノッチ付きシャルピー衝撃強さ(割れるまでに吸収できる衝撃エネルギーの指標)を4.94から9.94kJ/m²へと2倍以上に高めた。積層方向(Z方向)の引張強さも20.8MPaから26.8MPaへ約30%上がっている。代わりにXY平面の引張強さは42.86MPaから37.6MPaへ下がり、同社は硬さを削って疲労への強さを取ったと説明する。

耐熱性はHT-PLAと同等で、ビカット軟化温度はアニール後で150.5℃、0.45MPaの荷重をかけた状態での荷重たわみ温度は107.6℃だとする。ただしデータシートを見ると、この107.6℃は100℃で30分のアニール処理を経た数値で、造形したままの状態では56.3℃にとどまる。荷重がかかる場所で耐熱性を活かすには、後処理が前提になる。

数値の裏付けとして、Polymakerは繰り返し衝撃を測る装置を自作した。誘導加熱プレートで温める銅の閉ループ配管(サーモサイフォン)の中に、8個の精密ベアリングで走る3Dプリント製のキャリッジを置き、24Vモーターがバネに蓄えた力でキャリッジを衝突ストッパーへ何千回も打ち付ける構造だ。キャリッジ自体が試験片で、前部と後部、衝撃を受け止めるインパクターの3部品に分けて造形する。1回の破壊で終わるシャルピー試験では、部品が過酷な環境で使われ続けたときの挙動が分からないため、疲労を測る装置が必要だったとしている。

配管を85℃に温めた条件で破断までの衝撃回数を数えると、HT-PLA Proは864回だった。HT-PLAの98回に対して9.7倍、室温での強靭さを狙ったPLA Proの232回に対して3.7倍にあたる。標準のPLAは162回、ガラス繊維入りのHT-PLA-GFは28回にとどまった。加熱しない室温の条件では、HT-PLA Proが3157回、PLA Proが1709回だった。

同じ85℃の条件で他の材料も試している。ABSは161回でPLAを下回り、PETGは261回、ポリカーボネートは426回だった。ナイロン12は6000回を超えたが、25回目でベアリングが脱落して熱が伝わりにくくなったため、結果が偏っている可能性があると同社は自ら注記している。

造形条件は通常のPLAとほぼ同じで、一般的なFFF方式のプリンターに対応し、加熱チャンバーも硬化ノズルも要らない。推奨はノズル温度230℃、ベッド温度25〜65℃で、造形速度は300mm/sまで検証している。密度は23℃で1.24g/cm³、ガラス転移温度は59.15℃、融点は173.35℃。データシートでは、造形時と保管時に同社の乾燥ボックスを使うことを強く推奨している。参考価格は1kgあたり25.99ドル(約4300円)または25.99ユーロ(約4800円)で、日本での販売価格は公表されていない。

同社は、荷重のかかる自動車部品でナイロンやポリカーボネートを置き換える材料ではなく、エンジニアリンググレードとして売り出しているわけでもないとしている。位置づけは、自社がこれまで作ってきたPLAのなかで最もバランスの取れた材料だという。

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FabScene編集部

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