ロンドン-ニューヨーク間を45分で結ぶ超音速ジェット機「A-HyM」のコンセプトが公開

スペインのデザイナー、Oscar Viñals氏が、最高速度マッハ7.3で飛行する超音速旅客機「A-HyM Hypersonic Air Master」のコンセプトデザインをデザインポートフォリオサイトBehanceで発表した。同機は150人(最大170人)の乗客を乗せ、ロンドン-ニューヨーク間を45分で結ぶことを想定している。

音速の7倍超える革新的な性能

A-HyMの巡航速度はマッハ6(時速7408km)、最高速度はマッハ7.3(時速9014km)に達する。これは一般的な旅客機の時速約900kmと比較して8倍以上の速度だ。全長120.3m、翼幅37.5mの機体は、高度3万メートルを飛行し、航続距離は1万6600kmに及ぶ。

Viñals氏は自身のポートフォリオサイトで「この航空機コンセプトにより、利用者は目まぐるしい速度での独特な飛行体験を楽しめるだけでなく、時間を『支配』できるようになる。例えば、ロンドンからロサンゼルスまでの旅行は、ヒースロー国際空港での搭乗からLAX(ロサンゼルス国際空港)での降機まで、わずか1時間半で完了する」と説明している。

機体の空虚重量は143トン、最大離陸重量は193トンで、離陸に必要な滑走距離は2,200m、着陸速度は時速220kmに設計されている。

機体構造には、摂氏500度まで耐えられる新型アルミニウム合金、チタン、カーボンファイバー、超高温セラミックマトリックス複合材料(UHTCMC)を使用する。特に注目すべきは、形状記憶合金(SMA)を採用したモーフィング技術だ。機首や翼の形状を飛行状況に応じて変化させることで、最適な空力特性を実現する。

騒音対策として、Viñals氏が独自に開発したSBMS(Sonic Boom Mitigation System)を搭載。このシステムは、音速突破時に機体下部から取り込んだ空気を高温・高圧に圧縮し、機体上部の4つのディフューザーから噴出することで、衝撃波の重なりを分散させる。これにより、地上への騒音影響を大幅に軽減し、高度4000~5000mでの陸上超音速飛行を可能にする設計だ。

推進システムには、ターボジェットエンジンとバイパスに配置された斜め爆轟(ごう)波エンジン(ODE)を組み合わせたハイブリッド方式を採用。燃料には環境負荷の少ない水素を使用し、ほぼ100%の燃焼効率を実現する。このシステムにより、離陸から超音速巡航まで幅広い速度域で効率的な推進力を得られる。

機内では、空力特性を優先した設計のため、従来の窓の代わりにバーチャルスクリーンを機体壁面に配置。拡張現実(AR)技術により、外部の景色をリアルタイムで表示するほか、飛行情報やエンターテインメントコンテンツを提供する。コックピットには、戦闘機と同様の電子光学ターゲティングシステム(EOTS)とLiDARセンサーを搭載し、悪天候時でも安全な離着陸を可能にする。

Viñals氏は「A-HyMは単なるデザイン演習ではなく、プロ仕様のCFD(数値流体力学)ソフトウェアを使用して空力特性、高速飛行時の温度伝達、圧力などを評価している」と強調。実現には多くの技術的課題が残るものの、超高速かつ持続可能な航空輸送の未来像を示すコンセプトとなっている。

関連情報

The A·HyM, Hypersonic airplane

FabScene編集部