
米国で薬物治療やセラピーを2種類以上試しても効果が現れない「治療抵抗性うつ病」(標準治療で改善しないうつ病)の患者は約300万人いるとされる。米テキサス州ヒューストンのMotif Neurotechは、こうした患者向けに頭蓋骨内に埋め込む小型インプラントの治験を、米食品医薬品局(FDA)から許可されたと2026年4月27日に発表した。FDAから「治験用医療機器申請(IDE)」が下りたことで、設立4年で難治性うつ病向け新規デバイスの臨床試験に入る最速の企業の一社となる。
製品は「Motif XCS System」。中核部品の「DOT」はブルーベリーほどの大きさで、ワイヤレスで電力を受け取り、脳の特定領域にやさしい電気刺激を送る。埋め込みは20分の外来手術で完了する設計だ。同社の特徴は、DOTを脳組織に直接接触させず、頭蓋骨の内側、脳の上の骨の部分に置く点にある。電極を脳組織に直接挿す従来の脳深部刺激療法(DBS)より侵襲性を抑えられると同社は説明する。XCSシステムは将来的に脳の信号をモニタリングする機能も加える計画で、より個別化した治療を組み立てる狙いがある。

治験は米国内最大8医療機関で実施する。主要評価項目は埋め込み後12カ月間の安全性で、副次的にうつ症状の改善、QOL、不安、認知機能を追跡する。共同創業者・CEOのJacob Robinson氏は「メンタルヘルスに苦しむすべての人によりよい人生の機会を与えるためMotifを設立した」と発表でコメントしている。
技術の基盤はライス大学のRobinson LabとYang Labで10年以上積み上げられた研究にあり、米国防高等研究計画局(DARPA)、米保健高度研究計画庁(ARPAH)、米国立衛生研究所のBRAIN Initiativeが初期段階を支援した。脳に触れずに刺激できる安全性を示す査読論文も先行発表されている。Motif Neurotechは今後、双極性障害、強迫性障害、アルツハイマー病、薬物使用障害への応用も視野に入れる。

