高湿度でむしろ発電量が増す3DプリントTENG——水素結合で電荷を固定する吸湿性ポリマーをLCD光造形で造形

FabScene(ファブシーン)  Schematic of a 3D printer depositing PEGDA hydrogel, with photoinitiator and crosslinking density illustrated in an inset diagram beside chemical structures.

擦帯電ナノ発電機(TENG)は人体の動きや環境振動から電力を取り出せる素子だが、湿度が高いと表面電荷が逃げてしまい出力が下がるという根本的な弱点がある。研究者が長年「どう湿気から守るか」という観点で設計してきたこの課題を、逆転の発想で解決した研究が2026年にAdvanced Functional Materialsに掲載された。

Q. Chen氏らの研究チームは、LCD(液晶ディスプレイ)方式の光造形3Dプリンターを使って、湿気があると「むしろ性能が上がる」摩擦エレクトレット層を造形することに成功した。アクリル酸(AA)・2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)・N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)をPEGDAと光共重合させることで、─COOH・─OH・─CONH─という親水性官能基を豊富に持つ数マイクロメートル厚のフィルムを形成する。これらの官能基が水分子を水素結合で固定し、「界面分極トリボ層」を形成することで電荷損失を防ぐ仕組みだ。分子動力学シミュレーションでは、ポリマー表面に安定した結合水の層が形成され、水分子同士の弱い相互作用がポリマー─水間の強い結合に置き換わることを確認している。

同じ光硬化性樹脂を使って複雑なラティス構造や、指に装着するフレキシブルスリーブ型のTENGなども造形し、BackCom(バックスキャッタ通信)リーダーと統合してブタ皮膚を通した植込みデバイスへの無線給電にも成功している。

LCD光造形は高解像度・高速・滑らかな面仕上げが特徴で、精細なパターンを持つ摩擦エレクトレット素子の造形に向いている。一方で、TENG向けの摩擦ポリマー材料へのLCD造形の応用はこれまでほぼ未開拓の分野だったと著者らは述べている。この技術は、ウェアラブルセンサーや植込み型デバイスの無線自己電源化に向けた実用的な経路を示す可能性がある。

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