肺胞のような不規則模様も3Dプリント可能、トリノ工科大などが新ソフト

FabScene(ファブシーン)  Three circular cross-sections of a porous material with lattice patterns, labeled a, b, c from left to right.

身近な3Dプリンターのスライサーは、四角いハニカムや格子状の「規則的な模様」を埋めるのは得意だが、自然界の組織のように、隣り合うセルの形がそれぞれ違う「不規則な模様」を連続したノズル経路で描くのは難しい。イタリア・トリノ工科大学とBioinside Lab、オランダ・マーストリヒト大学MERLN研究所、日本の関西医科大学Biomedical Engineering Centerの研究チームは、不規則模様の代表である「ボロノイ模様」(点を中心とした自然なタイル分割模様)を押出方式の3Dプリンターで連続したパスとして出力できるPython製ソフトを開発した。論文「Bioinspired scaffold design using a custom Voronoi path generator for extrusion-based 3D printing」がRoyal Society of Chemistry発行の学術誌「Biomaterials Science」に2026年2月24日付でオープンアクセス公開された。

開発したソフトは「PyVoroGen」(パイボロジェン)と呼ばれ、シードの数、模様の直径、繊維の太さといったパラメーターをグラフィカルなUIから指定するだけで、ボロノイ模様の連続したノズル経路を表すG-codeを自動生成する。内部ではグラフ理論のアルゴリズムで模様の各エッジを途切れなく辿り、押出を中断せずに描き切るパスを作る。多孔率や穴の面積も事前に予測でき、3DプリンターのFFF方式(熱溶解積層方式)と、髪の毛より細い繊維を直接積層できるMEW(メルト・エレクトロライティング、溶融電界紡糸)の両方に対応する。FFF出力時には既に積んだフィラメントとぶつかる場面でノズルを持ち上げて回避する補助処理も自動で挟む。

FabScene(ファブシーン)  Dark Voronoi Generation settings window: seeds 300, pattern diameter 14.9 mm, fiber 0.15 mm, center (0,0,0); border and MEW/FDM options; Generate button visible (panel a).
PyVoroGenの画面

実機で出力したスキャフォールド(細胞を培養する足場)を共焦点顕微鏡で観察したところ、設計通りのボロノイ形状が確認された。MEWでは平均約92µm(マイクロメートル)の細い繊維、FFFではより太い繊維を、それぞれの方式の特性に応じて出力できた。多孔率の実測値はソフトの予測値とほぼ一致し、誤差はFFFで約2.2%、MEWで約1.7%にとどまっている。

研究チームは、出力したボロノイ模様の枠組みに、さらに細かいエレクトロスピニング(電界紡糸)でつくったポリカプロラクトンとゼラチンの不織布膜(厚さ約3µm)を重ねて多階層のスキャフォールドにした。これに、肺胞の上皮細胞(A549)と血管内皮細胞(HUVEC)を膜の表側と裏側にそれぞれ培養したところ、空気と液体が接する条件下で10日間維持され、肺胞と毛細血管の境界に近い層構造を再現できたという。

論文はクリエイティブ・コモンズ(CC BY-NC 3.0)で公開されており、誰でも本文を読める。

関連情報

Three circular cross-sections of a porous material with lattice patterns, labeled a, b, c from left to right.

fabsceneの更新情報はXで配信中です

この記事の感想・意見をSNSで共有しよう
  • URLをコピーしました!
目次