
導電インクを3Dプリントで塗布した後、その下の素材を傷つけずにインクだけを焼成できない——10年以上にわたって電子回路の3Dプリントを阻んできた制約に、ライス大学の研究チームが突破口を開いた。開発したのは「Meta-NFS(metamaterial-inspired near-field electromagnetic structure)」と呼ぶデバイスで、マイクロ波エネルギーを直径200µm(人間の毛髪1本分)程度の狭い領域に集中させる。論文はScience Advances(DOI: 10.1126/sciadv.adz7415)に掲載された。
従来の焼成(シンタリング)は炉やレーザーで素材全体を加熱する方式で、温度に敏感な生体材料や柔軟素材には使えなかった。レーザー焼成は精度が高い一方で特定波長の光を吸収する素材にしか使えないという制約があった。Meta-NFSは通常の同軸マイクロ波プローブが目標素材に伝わるエネルギーが8.5%にとどまる問題をメタマテリアル設計で克服し、ナノ粒子インクを160℃以上に加熱しながら周辺素材をほぼ常温に保つ。
マイクロ押し出しノズルと隣接するMeta-NFSプローブが同時に動作し、塗布直後の導電インクをリアルタイムで焼成しながら印刷を進める。マイクロ波出力をリアルタイムで調整することでナノ粒子の結晶構造を変え、電気抵抗率を3桁以上変化させることも可能で、1回の連続印刷プロセスで電気的・機械的特性が異なる多機能回路を材料を切り替えることなく作れる。
対応素材は銀や金属にとどまらず、セラミクスや熱硬化性ポリマーにも拡張できることが示された。研究チームは生体適合ポリマーへの無線ひずみセンサーの印刷や、植物に直接貼り付けて生育をリアルタイム監視するデバイスの作製例を示している。論文を率いたYong Lin Kong助教授(ライス大ジョージ・R・ブラウン工学・計算科学院)は「デスクサイズのプリンターで、生体組織を含む幅広い素材に直接フリーフォームの電子回路を集積できる」と述べている。

