
一般的なスマートウォッチは、明るい画面と頻繁な充電で小型の電話のような存在だ。電気/メカトロニクスエンジニアのSelbyc氏(GitHub: ephiras)が設計したE-ink腕時計「Inkwell Watch」(旧名Flexwatch)はその反対を狙ったプロジェクトで、軽くて電池寿命が長く、病院のリストバンドのように存在を忘れる軽さのウェアラブルを目指した。
中核はSeeed Studio製のBLEマイコンボード「nRF52840 Sense」と、Waveshareの2.9インチフレキシブル電子ペーパー。IMUはLSM9DS1、RTCはRV-3028-C7、電池は400mAhのリチウムポリマーで、レギュレーターやI²Cレベルシフターも自作のフレックスPCB上に実装した。ファームウェアはArduinoからZephyr RTOSへ移行中で、電源管理とBLEスタックの安定性向上を狙う。
最初の試作はフレキシブルPCBと電子ペーパーの組み合わせだった。だが電子ペーパーの「フレキシブル」は薄い基板の話で、上のTFT層は工場が意図した方向にしか曲がらない。少しでもねじると薄膜トランジスタに見えないひびが入り、線状の表示欠損が出る。Selbyc氏はリボンコネクター付近の曲げで複数の画面を破壊し、フレックスPCB自体もトレース断線を繰り返したという。
解決策は剛体フレームへの置き換えだった。最初はTemuの安価なブレスレットを流用したが、Waveshareが小型の2.13インチモデルを生産終了し、2.9インチへの移行でフレームが合わなくなった。最終的に採用したのは、Kmartで娘の学校用品を買った際に見つけた50セントのプラスチック定規だ。煮立った湯で軟化させ、ジャーに巻き付けて冷却して必要なカーブを出している。内側はレザー合皮でライニングした。
現行版はGPS、心拍センサー、ジェスチャーセンサーを省略して約6日の電池寿命を実現。コードとEagleのPCBデータはMITライセンスでGitHubに公開されている。

