ラズパイで「鳥の好きな歌」を科学する装置、オープンソースで公開

FabScene(ファブシーン)  Collage: single-board computer, IR sensors, DAC, two speakers, amplifier, and a cage setup.

鳥が自分の種の歌を好むのか、親の歌を好むのか——1950年代から続く鳥類の歌選好研究は、高価なカスタム設計のデジタルI/Oハードウェアに依存しており導入の敷居が高かった。カナダ・アルバータ大学のSongbird Neuroethology Lab(鳥類神経行動学研究室)のPrateek K. Sahu氏らはRaspberry Pi Zero 2 Wを中核に据えた低コストの行動実験装置を開発し、査読付き誌Behavioural Processesに発表した。2026年4月23日、Raspberry Pi公式ブログでも紹介されている。

実験装置の基本は、鳥の行動によって音声再生をトリガーする「オペラント条件付け」のしくみだ。鳥は止まり木を頻繁に移動する習性があり、Adafruit IR Break Beamセンサーを複数の止まり木に設置して移動を検出する。各止まり木に異なる刺激音源(例えば同種の歌と異種の歌)を割り当てておくと、鳥は好きな鳴き声を引き出す止まり木を選んで移動する。鳴き声を聴くこと自体が鳥にとって報酬(自己強化)となるため、好きな鳴き声を繰り返し選ぶ傾向が測定可能になる。

音声再生の品質を担保するため、DACにはHiFiBerry DAC+ Zeroを採用し、スピーカーは動物の発声周波数帯域をカバーするDayton Audio製8Ωフルレンジを組み合わせた。制御はPythonスクリプトで書かれており、測定パラメータや出力フォーマットの変更も容易だ。Raspberry Pi Zero 2 WのWi-Fiを活かしてSSHでリモート監視ができ、SDカードに記録したデータをWinSCPで取得する設計になっている。消費電力も低く、長時間の連続運用に適している。

装置の製造コストは200カナダドル(約2万3000円、約145米ドル)未満。検出精度や応答性は商用システムに匹敵するとしており、オーディオレコーダーやカメラモジュールを加えた拡張も想定されている。コード一式とセットアップガイドはGitHub(prateek754/songpref)で、データセットはOSF(osf.io/xknpy)で公開され、論文もオープンアクセスで閲覧可能だ。

Sahu氏らによる今回の限定的な試験では、同種の歌に対する選好は明確に観察されなかった(予測確率44%、90%CI [22%-72%])。野生捕獲個体を実験室に持ち込んだ条件や、刺激の新奇性、時間経過による馴化、個体差などが影響した可能性がある。ただし、鳥がこの装置に積極的に関わって行動を示したこと自体が装置の有効性を裏付けており、今後の幅広い研究への扉を開く成果だとしている。

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