秋葉原の東京ラジオデパートに「アキバオーディオパーツセンター」開店、店主は現役大学生

秋葉原の東京ラジオデパート3階に、同人ハードや電子パーツを扱う「アキバオーディオパーツセンター」が2026年10月19日にプレオープンした。グランドオープンは25日の予定だ。店主の國井悠成氏は、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)に通う大学生で、自身も真空管を使った同人ハードウェアの開発・販売活動を行っている。開店を決めてから約3カ月、仲間と手作業で店を仕上げた。

プレオープン初日のアキバオーディオパーツセンターの様子。真空管を中心に、委託販売の工作キットなど扱う

店の柱は、同人ハード、電子パーツ、有償の技術相談、ワークショップの4つだ。同人ハードは、個人や少人数のグループが自主制作して販売するハードウェアを指す。國井氏が作ったキットのほか、仲間の作品を委託販売の形で並べる。委託品はグランドオープン前から受け付けており、手数料はラジオデパートの相場に合わせる。今後はECサイトも立ち上げる。営業日は月・金・土・日曜日で、営業時間は12時から19時だ。

技術相談は有償で受け付ける。國井氏は個人事業として、委託開発やバーへの音響機材の納品、遊具の電車の修理を請け負ってきた。店はこうした仕事の窓口も兼ねる。

最初の委託販売が原点に

アキバオーディオパーツセンター店主の國井悠成氏。

委託販売に場所を多く割いた理由は、國井氏自身の経験にある。宮城県出身の國井氏は、子どものころから年に1回ほど秋葉原を訪れ、ラジオデパートなどでラジオの部品を買っていた。高校生のときにリサイクルショップのハードオフで真空管を見たのが、この道に入るきっかけだった。「真空の中で電極は絶縁されているのに、温めると電気が流れる。謎が多くて楽しい」と國井氏は話す。

高校を卒業して社会人になった後、秋葉原に通うために上京した。約3年間通い続けた時期に、自作した持ち運べる真空管ヘッドホンアンプの販売を、ラジオデパート3階で真空管を扱うサンエイ電機に委託した。これが初めての委託販売で、製品が実際に売れたことが成功体験になったという。

國井氏が最初に手がけたヘッドフォンアンプ

部品店の跡地に「パーツを残したい」

店を開くきっかけも、そのサンエイ電機店主の柿沼氏との縁から生まれた。サンエイ電機の隣にあった電子部品店が閉店し、跡地の借り手を探すことになったからだ。柿沼氏によると、秋葉原電気街のルーツとも言える部品店が減り続けている状況を憂うビルの複数の店主が「パーツ屋を残したい」と考えていた。

柿沼氏は企業も含めて何人かに声をかけ、その中で手を挙げたのが國井氏だった。國井氏は、定年退職した後にでも店を開こうと考えていたが「そういう話が来たなら、やるしかない」と引き受け、3ヶ月でオープンまで漕ぎ着けた。

引き受けた区画は、前の店が撤去した後のままの状態だった。國井氏はものづくりの仲間の手を借りて配線をやり直し、壁を塗り、床を整えた。資金は自己資金でまかない、営業面や仕入れではサンエイ電機の協力も得ながら、小さく始めて少しずつ広げていく方針だ。

子どもが道具に触れる場所に

店舗の一角に設けられた工作スペース

店づくりの先に國井氏が描くのは、作る人を増やすことだ。「基板の発注も楽になったし、3Dプリンターも発展してきた。もっといろんな人が物を作って売れる社会になったらうれしい」と國井氏は語る。

その入り口として、國井氏と柿沼氏ははんだ付けなどのワークショップを開く方向で準備している。柿沼氏によると、秋葉原では火災リスクなどを考慮して、はんだごてを使った電子工作のワークショップを開ける場所が減っているという。中学校の技術の授業でも電子工作を扱う機会は減った。先日は、子どもがラジオのキットを作りたがっているという母親から「どこで売っているのか」と尋ねられたという。柿沼氏は、國井氏のような若い作り手から、さらに下の世代にものづくりがつながっていけばと期待する。

國井氏が来てほしいのは、子どもに電子工作を教えたい親と、その子どもだ。店ではアルバイトの店員にも空いた時間に作業してもらい、道具を使ってものを作る様子を見せたいと考えている。「あちらこちらでシャッターが閉まったままになり、自分が好きだった秋葉原がなくなっていくのが悲しい。昔ながらの店だけど、ちょっと新しい店を目指したい」と國井氏は話す。

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FabScene編集長。オープンソースハードウェアや3Dプリンター、デジタルファブリケーション、ハードウェアスタートアップを専門領域とする。

大学卒業後、複数の業界でデジタルマーケティングに携わる。2013年当時に所属していた会社でwebメディア「fabcross」の設立に参画。12年間に渡ってサイト運営に従事し、月間100万PV規模に成長させる。並行して国内外のハードウェア・スタートアップやメイカースペース事業者、サプライチェーン関係者など100人以上取材。

2017年に独立、2021年にシンツウシン株式会社を設立。編集者・ライターとして複数のオンラインメディアに寄稿するほか、企業のPR・事業開発コンサルティングやスタートアップ支援事業に携わる。

2025年にFabSceneを設立。ハードウェアとデジタルファブリケーションの「現場」を一次取材で記録することをミッションとする。趣味は365日働ける身体作りと古着屋巡り。

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