
AIの計算に欠かせない高速メモリ「HBM」の熱の問題に、韓国と日本の研究チームが、それぞれ新しい方式で挑んだ。DRAMのチップを、これまでのように上へ積み上げるのではなく、本を棚に立てるように横向きに並べる、という共通の発想だ。寝かせて並べれば、1枚ずつが冷却材に触れる面になり、熱を逃がしやすくなる。2つの方式は、6月のVLSIシンポジウムで発表された。
今のHBMは、DRAMのチップを何枚も上へ積み、層を貫く縦の配線(TSV)で信号と電力を通す。ただ、積むほど熱がこもって逃げにくくなり、配線もチップの面積を食うため、外とつなぐ端子の数を増やしにくい。AIモデルの巨大化で、メモリの容量と速度が追いつかなくなりつつある。1つのAI向けチップは、こうしたHBMの積み重ねを8つ前後も抱えており、熱と容量の制約は年々厳しくなっている。
韓国のUNISTなどのチームがまとめた「V-Die」は、専用のDRAMチップを90度立てて並べる。層を貫く配線をなくして空いた面積を記憶素子に回し、各チップの下端に専用の端子を設ける。縦の配線に頼らない分、外とつなぐ端子も増やしやすい。チップの間には、液体で冷やす流路を通す。最新のHBM4に比べ、約82%速くなると見込む。
東京大学が率いるチームの「MOSAIC」も、チップを横倒しにする考え方だ。こちらは、HBM4の2倍の記憶容量を、最高温度の上昇を1℃ほどに抑えながら得られるとする。積み上げ式では容量を増やすほど熱がこもりやすかったが、その弱点を抑えつつ容量を伸ばす狙いだ。
どちらも、学会で示された段階の研究で、HBMに代わる方式として実用に耐えるかは、これからの検証にかかる。それでも、上へ積む一辺倒だった高速メモリに、横へ広げるという別の道を示した点で注目される。

