光を当てると磁気状態で電流の向きが変わる極薄磁性体、東大と理研が発見

東京大学物性研究所の井手上敏也准教授らと理化学研究所の岩佐義宏グループディレクターらの共同研究グループが、原子2層分の薄さしかない磁性体に光を当てると、磁気の状態に応じて逆向きの電流が発生することを発見した。論文は2026年5月18日にNature Materialsにオンライン掲載された。

磁石と聞くとN極とS極が明確な強磁性体を思い浮かべるが、今回対象にした「反強磁性体」は隣り合う原子の磁石が互いに逆向きに打ち消し合い、全体では磁力がほぼゼロに見える特殊な磁性体だ。外からは磁石に見えないにもかかわらず、内部には磁気的な秩序が存在する。これまで、磁力がないため外部から磁気状態を読み出す手段が限られていた。

研究グループはこの物質を原子2層分まで薄くして光を照射した。結果、外部電圧をかけなくても光だけで電流が発生し、しかも2種類の磁気状態(上下層のスピンの向きが「AがBの上」か「BがAの上」か)で電流の向きがちょうど逆転することを発見した。磁気の秩序がない状態では電流はゼロだった。発生した電流は結晶全体で均一に流れるのではなく、上の原子層と下の原子層それぞれに局所的に流れることも確認した。電極の設計を変えることで上の層だけ、または下の層だけの電流を取り出すことも可能だとした。

この現象は電子の波動関数が持つ「量子幾何学的性質」という量子力学的な特徴で説明できることも理論的に示した。今後、光とスピンを組み合わせた超低消費電力メモリや量子デバイスへの応用が期待される。

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Illustration of a lab setup with a laser beam and layered translucent device, representing spin-dependent photoconductivity in a thin antiferromagnet.

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