基地局もSIMも不要な5G規格「DECT NR+」、通信ソフトが無料公開

ドイツのコミュニティOpener Initiativeが、無線規格「DECT NR+」の通信ソフトを無料で公開した。携帯電話の電波を借りず、自分の敷地に自分で無線ネットワークを敷ける規格だが、対応製品を作るための通信ソフトはこれまで半導体メーカーが非公開で抱えていた。名前は「Opener」で、ライセンスはApache 2.0のため商用製品にも組み込める。

DECT NR+は、コードレス電話で使われてきたDECTの流れをくむ規格で、欧州の標準化団体ETSIが仕様を定めた。2021年10月には国際電気通信連合が5Gの一種として認定している。5Gといっても携帯電話網とは仕組みが違い、基地局にあたる設備もSIMカードも通信会社との契約も要らない。使うのは1880〜1930MHzの免許不要の電波で、機器同士が役割を分担しながら網を作る。必要な場所に、必要なときだけ立ち上げられる。

得意なことは2つある。1つは数の多さで、1平方kmあたり100万台までつながり、電池で動くセンサーなら数年もつ。もう1つは速さと確実さで、電波が届くまでの遅れは1000分の1秒未満、通信が成功する割合は99.999%を目標に置く。想定する使い道は、工場やビルに敷くセンサー網、そして舞台や放送で使うワイヤレスマイクなどのプロ用音響機材だ。

ただし規格そのものは、機器がどう電波をやりとりするかを決めた文書にすぎない。製品にするには、その手順どおりに動くソフトウェアが別に要る。Opener Initiativeは、ここが自由に使える形で存在しなかったために、スタートアップや中小企業、大学の研究室がDECT NR+に手を出せずにいたと指摘する。半導体メーカーが用意する非公開のソフトを使えば動くものの、そのメーカーのチップから離れられなくなる。

Openerが引き受けるのは、電波そのものを出し入れする部分より上、つまり「いつ誰が送るか」「届かなかったらどうするか」といった通信の段取りを決める層だ。電波を扱う部分は各社のチップに任せるため、特定のメーカーに縛られない。土台には組み込み機器向けの基本ソフトZephyrを選び、欧州の規格に合っているかを確かめる公式試験の合格も目標に掲げる。

開発費はドイツ連邦研究・技術・宇宙省が助成する研究プロジェクトが出し、期限のあるプロジェクトが土台を作り、期限のないコミュニティが受け継いで育てる形を採る。公開されたばかりで、開発元も研究開発向けの参照用と位置づけており、動作の保証はないと明記している。

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