米大学が腕時計の裏ぶたで手の形を読む装置を開発、設計データを公開

米ノースウェスタン大学の研究チームが、腕時計の裏ぶたに電極を並べて手の動きを読み取る「EITWatch」を開発し、基板データとファームウェアを公開した。手首に微弱な電流を流し、内部の電気の通りにくさの分布から指の形を推定する。使ったのはSeeed StudioのXIAO ESP32-S3で、市販の40mm径の腕時計ケースに収まる。

土台にあるのは電気インピーダンストモグラフィー(EIT)と呼ぶ計測手法だ。体の周囲に電極を並べ、ある1組から電流を流して残りの電極で電圧を測る。これを組み合わせを変えながら繰り返すと、内部のどこに電気を通しやすい組織があるかを断面図として描ける。医療では肺の換気の様子を見る用途で使われてきた。

手首でこれを使う先行研究は、電極を腕輪のように一周させる方式を採っていた。EITWatchは8個の電極すべてを裏ぶたの平面に置く。直径31mmの円周上に並べ、隣り合う電極の間隔は約11.9mmになる。腕時計として成立させるための制約だが、平面に並べると電流が届く深さが限られる。

そこで研究チームは、電流の流し方を工夫した。1個の電極を送り出し側に固定したまま、受け側を残る7個へ順に切り替えていく。組み合わせによって電流が通る深さと角度が変わるため、深さの違う情報を集められる。1枚の画像あたり35回の測定を、毎秒48枚の速さで繰り返す。

回路は既製の部品を組み合わせた。50kHzの正弦波を作る波形発生器で約1mAの電流を流し、計装アンプと12bitのA-D変換器で電圧を読む。電極の組み合わせは8チャンネルの切り替えスイッチ4個で選ぶ。基板は40×60mmの6層で、電極の輪が40mmのケースに収まり、残る20mmにアナログ回路を載せる。

認識の精度は、握り拳や指差しなど大きな6種類の手形で92.5%、つまむ動作や指を横に払う動作といった5種類の小さな動きで91.5%だった。ただし48時間後に測り直すと73.2%と70.4%に下がり、別の人が装着した場合は63.1%と55.3%まで落ちる。装着のたびに電極と皮膚の接し方が変わるためで、研究チームはこの数字も論文に載せている。

パソコンへ無線で送らず、ESP32-S3だけで完結させる構成も試した。2つあるコアの片方でデータを取り、もう片方で前処理と判定を動かす。消費電流は約35mAで、300mAhの電池なら約8.6時間もつ計算になる。

設計データはAltiumのプロジェクトからガーバー、部品表、3Dモデルまでそろい、ハードウェアはCERN-OHL-P-2.0、ファームウェアはApache License 2.0で公開されている。ただし研究用の試作品であり、体に電流を流すため、ペースメーカーなどを埋め込んでいる人には使わないよう明記されている。医療機器としての使用も想定していない。成果はユーザーインターフェースの国際会議UIST 2026で発表される。

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