
韓国の釜山大学校と米オークリッジ国立研究所などの研究チームが、印刷している最中に分子の向きを反転させられる3Dプリント用の液晶エラストマーインクを開発した。同じインクを同じ経路に沿って押し出しても、ノズルの温度と移動速度を変えるだけで、加熱したときに縮む部分と伸びる部分を作り分けられる。1本のフィラメントの中で向きを切り替えることもできる。
液晶エラストマーは、棒状の分子を含むゴム状の高分子だ。温度が上がると分子の並びが乱れ、その向きに沿って縮み、直交する方向へ伸びる。押し出し式の3Dプリントでこの材料を使う場合、これまではネマチック相のインクが定石だった。ネマチック相の分子はノズルの進む向きに揃うため、印刷したフィラメントは「印刷方向に縮む」という1通りの動きしか持てない。
研究チームが使ったのはスメクチック相のインクで、こちらは分子が層をなす。せん断が弱いうちは層が保たれ、分子は印刷方向と直交する向きに並ぶ。温度かせん断速度が上がって層が崩れると、分子は流れに沿って平行に並び替わる。2つの状態を印刷条件で選び分ける、というのが手法の核心になる。
条件はかなり狭い。ノズル内径0.4mm、ノズルと下地の間隔0.2mm、吐出圧500kPaで印刷し、せん断速度は移動速度を間隔で割って求める。インクが等方相へ移る温度は40℃だった。35℃と37℃では、移動速度を毎秒2mmから30mmまで振っても分子は直交したまま動かない。45℃では速度を上げると平行へ向かう。反転が起きるのは40℃のときだけで、毎秒10〜15mm(せん断速度50〜75/秒)では2つの向きが混ざった。反転が起きる範囲は、粘度曲線で2段目のずり流動化が始まる40〜60/秒とほぼ重なる。
支配しているのはせん断速度そのものだった。ノズル内径を0.6mmにしても、ノズルの高さを変えても、せん断速度に換算すれば33〜67/秒の範囲で反転が起きた。分子量を上げて粘度を4〜5倍にしたインクでは、反転する範囲が10〜25/秒まで下がる。粘度曲線を測れば、そのインクの切り替え条件を予測できることになる。
伸縮の幅は、1本のフィラメントで28%の伸長から31%の収縮まで。動きを止めたときに出る力は、伸びる側で0.30MPa、縮む側で0.51MPaを測った。10℃から100℃まで100回動かしても、変化は1.5%程度にとどまる。3層重ねた4×4の同心正方形は、35℃で印刷すると卵ケース状に、43℃で印刷すると多数の円錐状に変形し、それぞれ112.6g(自重の約266倍)と302.6g(約887倍)を支えた。成果は2026年7月10日、学術誌「Nature Communications」に掲載された。
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Alignment switching in 3D-printed smectic liquid crystal elastomers(Nature Communications)

