2026年5月30日〜31日の2日間、東京流通センターで「Japan RepRap Festival 2026(JRRF 2026)」が開催されている。自作・改造機から最新商用機まで、3Dプリンターを愛する人々が集まる国内最大級のコミュニティイベントだ。
2025年の初開催からさらに規模を拡大し、今年は140を超えるブースと50以上の協賛企業が参加。個人Makerやコミュニティ、メーカーまでが一堂に会し、会場にはオープン直後から多くの来場者が集まっていた。

完成品を見せるだけではなく、設計の工夫や改造の過程、失敗と試行錯誤までもが共有されるのがJRRFの魅力だ。3Dプリントコミュニティならではの熱量が感じられる会場から、個性豊かな展示をピックアップして紹介しよう。
広くなった会場で、出展スタイルもさらに多彩に
昨年と比べて会場規模が拡大したJRRF 2026。屋外にはフードトラックや飲食スペースも設けられ、じっくり楽しむイベントとしての充実度がさらに高まった。

MakerChipの交換が至る所で行われる会場では、3Dプリント製のアクセサリーやガジェットを身につけて歩く人も多く、来場者自身が展示の一部になっているような雰囲気を感じられた。


この広さを生かした新たな試みの一つが、会場の特設サーキットで開催された「JRRF3Dプリントラジコンフェス」だ。参加条件は「3Dプリントを活用した自作マシン」であること。3Dプリントならではの設計や改造の工夫を共有しながら、サーキットをさまざまなマシンが走り抜けていた。

なかでも印象的だったのはproko氏のマシンだ。一見するとスタイリッシュなRCカーだが、その内部では見慣れたエクストルーダーが動いている。3Dプリンターで作られたRCカーの中に、さらに3Dプリンターの機構を組み込むという不思議な入れ子構造になっているのだ。
イベント開催を聞いて開発したというこのマシンは、そのワイルドな発想だけでなく、90度傾けても安定して動作する設計力も見どころ。現状ではRC制御とは独立しているものの、将来的にはすべてが連動する進化形も期待したくなるマシンだった。
独自の進化を遂げる自作3Dプリンターたち
Japan RepRap Festivalの名前の由来にもなったRepRapは「自己複製可能な3Dプリンター」を目指したオープンソースプロジェクトだ。設計データや回路図が公開され、それをベースに世界中のMakerたちが独自の改良を加えてきた。その広がりはまるで生態系のようでもある。
市販機の性能が飛躍的に向上した現在でも、自作機文化は健在だ。会場には、それぞれの思いや課題意識を反映した個性的なマシンが並んでいた。
P-103 ぷるさと村(またろう)

Prusaベースの自作3Dプリンターが並ぶ「ぷるさと村」エリアで存在感を放っていたのが、「BOKSAM 3Dプリンター」だ。回転式の18ツールチェンジャーを搭載した大型マシンで、PrusaのMMU(マルチマテリアルユニット)の発想をさらに推し進めたような構成となっている。
一般的なツールチェンジャーが横方向へ並ぶのに対し、BOKSAMではエクストルーダーが円形に配置されている。そのインパクトだけでも十分に目を引くが、ツールを制御する自作基板やチューブの取り回しなどにも工夫が光る。一見すると突飛なマシンだが、ツールチェンジャー自作の敷居を下げる、RepRapらしい実験精神を感じさせるものだった。
G-213 自作3Dプリンタの展示

こちらのブースではFraxinus(フラクシネス)をベースにした3台の自作3Dプリンターが展示されていた。なかでも目を引いたのは、Benchyを約5分で出力する超高速機(写真右)だ。送り出しギアが猛烈な勢いで回転する一方、素材を冷却するための送風も豪快。出力速度を限界まで高めるための工夫とロマンが盛り込まれていた。
P-105 proko & たくふろ

こちらもFraxinusベースの自作3Dプリンター。作者のたくふろ氏による、工具メーカー・マキタへの愛から生まれた、色も形もリスペクトを感じられる一台だ。マキタのバッテリーで駆動するよう設計されており、持ち運びケースにもぴったりとフィットする。その場で必要なアイテムを印刷して、同じバッテリーを使ってビス留めをする。そんなシチュエーションを想像すると楽しくなる。
M-303 立川博行

立川氏は、自宅で大型のペレット式3Dプリンターを運用している。そのサイズゆえ実機の持ち込みは叶わなかったものの、リサイクルペレットを用いた作品群「Drift」を展示。ブース内で使用されていた什器やスツールの一部も、自身の大型3Dプリンターによって制作したものだという。大型化という方向性もまた、自作プリンターの進化の一つになりそうだ。
表現と仕上げのさらなる追求
会場には多色印刷や特殊フィラメントを活用した作品だけでなく、研磨やメッキといった後加工、さらには設計手法そのものを拡張するソフトウェアまで、多彩なアプローチが並んでいた。多色印刷が普及した今、3Dプリントの表現は造形そのものだけでなく、その先の工程へと広がっている。
K-203 HEN3DRIK x JanTec

ドイツから参加したHEN3DRIKとJanTec Engineeringは、材料試験や強度評価、表面処理に関する研究成果を展示。なかでも目を引いたのは、HEN3DRIKによる電解メッキ加工だ。ピカピカに輝く作品群は、会場でもひときわ強い存在感を放っていた。複雑な形状は確かに3Dプリントらしいのだが、その表面は樹脂とは思えないほど美しい。造形物の価値をさらに高める手法として、出力後の仕上げにも大きな可能性があることを感じさせる展示だった。
K-304 犬小屋研究所

犬小屋研究所では、自作研磨機プロジェクトが紹介されていた。主に金属部品の仕上げに用いられる研磨機を3Dプリントで構築し、その設計データも公開している。
市販の研磨機は高価で修理も難しいが、自作できれば導入のハードルは大きく下がる。研磨材として使われるくるみ殻や竹片が効率よく攪拌する構造にも工夫が凝らされており、作者の長年の設計ノウハウが詰め込まれていた。磨き上げられた金属パーツの仕上がりは見事で、さまざまな用途への応用が期待できそうだ。
G-116 Sabre Design

MakerWorldなどの3Dデータ共有サイトで作品を公開しているSabre Design。イベントのためにオランダから来日し、工夫の凝らされた3Dプリントプロダクトを一挙に展示していた。
縦のスリットが特徴的なデザインや、複数色の組み合わせによる、器の一部が欠けたような独特の表情。派手なギミックに頼らず、造形そのものの美しさで魅せる作品群からは、プロダクトデザインと3Dプリントの相性の良さを改めて実感した。
G-113L 512Works

512Worksは、Blenderで作成したカーブデータから直接G-codeを生成するプラグインを開発。Grasshopperなど複数のツールを経由していたワークフローを簡略化し、編み構造のような表現をより身近なものにする試みだ。途中でのフィラメント切り替えなど、これまでスライサー側で行っていた設定もBlender内で完結できるという。
無料のCGソフトであるBlenderが、G-codeという3Dプリントの強力な表現手段と結びつくことで、どのような作品が生まれていくのか。表現の可能性をさらに広げる、新たなツールとしての展開が期待できそうだ。
かわいい、楽しい、おもしろい。広がる3Dプリントの裾野
かつて3Dプリンターは、一部のエンジニアやMakerのための道具というイメージも強かった。しかしJRRFの会場を見渡すと、その状況は大きく変化したことが分かる。ファミリー層や幅広い年代の来場者の姿も多く、展示内容も技術一辺倒ではない。キャラクターグッズや食品サンプル、体験型の工作など、「作る楽しさ」を伝える展示も数多く並んでいた。
K-4 Cocopossa / ココポッサ

こちらのブースにはオリジナルキャラクターをモチーフにしたアイテムが並び、一つの世界観で統一されている。ファンシーな色使いと丁寧な仕上げはもちろん、フィラメントの選定にもこだわりが感じられた。3Dプリンターを表現のための道具として使いこなし、自分だけのキャラクターや世界を形にしていく、ものづくりの楽しさが伝わってくる展示だ。
M-409 Foodie & Key

Foodie & Keyでは、食品サンプルやミニチュア制作の経験を活かしたキーキャップなどのアイテムが並ぶ。単に出力するだけではなく、塗装や異素材との組み合わせによって完成度が大きく高まっている。
特に、光造形で作られたいくらと、FFF方式で作られた海苔を組み合わせた軍艦巻きの仕上がりは秀逸だ。3Dプリントならではの遊び心と実用性が同居する作品群には、子どもから大人まで多くの人が手を伸ばしていた。
K-8 しぶちょー技術研究所

3Dプリントは素材を積み重ねて形を作る「加算加工」の代表格だ。その対極にあるのが、素材を削り出していく「減算加工」である。しぶちょー技術研究所では、減算加工式の工作機械である旋盤を体験できる3Dプリント製のミニチュアを展示。手回しでも電動でも動作し、蝋燭を削りながら加工の楽しさを体験できる。
会場では子どもたちが夢中になってハンドルを回す姿も見られた。将来的には、子どもたちにものづくりの面白さを伝える教材として発展させていきたいという。最先端の技術だけでなく、「作る楽しさ」そのものを伝える展示もまた、JRRFらしさの一つと言えそうだ。
会場で熱気を体感しよう

高速印刷を追求する人、自作プリンターを組み上げる人、仕上げ加工を研究する人。キャラクターグッズや食品サンプルを制作する人もいれば、プラスチックの再利用や子ども向けの体験に取り組む人もいる。
JRRFの会場を見渡すと、その活動の幅は広い。しかし「作って、改良して、共有する」という文化が根底に流れているからこそ、会場の雰囲気は温かく、コミュニケーションも心地よい。市販機の性能向上によって3Dプリントは身近なものになったが、JRRFには今もRepRap由来の実験精神やDIY文化が色濃く残っていた。

実物を目の前にした魅力や迫力、出展者との会話を楽しめるのもJRRFならではの体験だ。3Dプリンターに興味がある人はもちろん、ものづくりが好きな人なら、新しい発見がある機会だ。ぜひこの熱気を会場で体感してほしい。
※FabSceneは当イベントにメディアスポンサーとして協賛していることから、PRであることを明記しています

