米企業がホットエンドの特許を欧州で取得、熱を遮る部品から力の役目を外す

米Slice Engineeringが2026年3月18日、3Dプリンターのホットエンドに関する特許を欧州で取得した。欧州特許EP3625025B1として成立している。熱を遮る細い管から、ヒーター部分を支える役目を切り離す構造を権利化したものだ。

FFF方式の3Dプリンターは、フィラメントを溶かすヒーターブロックと、その手前でフィラメントを冷やしておく部分を、ヒートブレークと呼ぶ細いステンレス管でつないでいる。ヒートブレークは2つの役目を負う。ヒーターの熱を手前へ伝えないことと、ヒーターブロックを物理的に支えることだ。フィラメントを押し込む力も、造形に失敗したときの衝撃も、ぶつけたときの力も、すべてこの管が受け止める。

特許の明細書は、2つの役目の兼務が設計上の行き詰まりを生むと指摘する。管の壁を薄くすれば熱は伝わりにくくなるが、強度が落ちる。厚くすれば丈夫になるものの、熱が手前へ逃げてフィラメントが早く軟らかくなり、造形の品質が下がる。設計者は、ぶつけたときに耐えられる厚みを選ばざるを得ず、その分だけ断熱の性能を諦めることになる。

Slice Engineeringの構造では、フィラメントが通る管の外側に、ヒーターと冷却部をつなぐ支柱とねじを別に配する。力はこちらが受け持ち、管は熱を遮ることに専念する。支柱は押される力だけ、ねじは引っ張られる力だけを受け、曲げの力はかからない。支柱とねじの断面積の合計は6.4mm²未満に抑え、そこを伝わる熱を減らす。

力から解放された管は、壁の厚さを0.025〜0.13mmまで薄くできる。試作では約0.076mmの、注射針に使われる極細のステンレス管を採用した。断熱が効くぶん、フィンの付いた放熱器や水冷の仕組みが要らなくなる場合があり、冷却ファンも小さくできる。ホットエンド全体の長さや太さ、重さも減らせる。溶かす部分の長さはブッシングの交換で変えられ、その際も全体の長さは変わらないため、ノズルと造形台の距離を測り直す手間が生じない。

同じ出願にもとづく権利は、米国で2件が2020年12月と2023年5月に、中国で1件が2022年5月に成立している。発明者はChristopher Mark Montgomery氏で、優先日は2017年5月17日にさかのぼる。同社はMosquitoの名で知られるホットエンドを手がけており、一連の特許をめぐっては米国で複数の訴訟が起きている。

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