ラズパイで走る電気自動車が完成、自作EVが18ヶ月で実走・遠隔操作を実現

Raspberry Piを搭載した電気自動車が、実際に走行することに成功した。Marc Lainez氏らの開発チームが取り組む「OVCS(Open Vehicle Control System)」プロジェクトで、古いVW(フォルクスワーゲン)ポロのボディに日産リーフ用の電気モーターなど複数メーカーの部品を寄せ集め、ラズパイをその中心に据えて車として走らせた。チームは「フランケンカー(継ぎ接ぎの怪物車)」と呼んでいる。現在は公道走行の認可を受けていないが、自走と遠隔操作いずれも実証に成功した。Raspberry Pi公式ブログが2026年5月18日に報じた。

このプロジェクトが解決しようとしている問題は、実は自動車オーナーなら誰でも体感しうることだ。現代の自動車はメーカーが独自の通信規格を使っているため、たとえばトヨタのエンジンとBMWのブレーキシステムを組み合わせても、2つのシステムは「話す言葉が違う」ため連携できない。純正部品以外への交換が難しかったり、修理に正規ディーラーしか対応できなかったりするのはこのためで、いわゆる「ベンダーロックイン」と呼ばれる問題だ。「ほとんどの車部品は普遍的な機能を持っているが、それぞれが話す言語は違う。どのブランドの部品でも組み合わせて使えるプラットフォームを作りたかった」とMarc氏は語る。

ラズパイはこの「通訳役」として機能する。自動車の部品間通信には「CAN通信」と呼ばれる規格が広く使われているが、メーカーごとに独自の解釈があり互換性がない。OVCSではラズパイにSPIモジュール(通信拡張ボード)を接続し、5系統のCANネットワークをすべて集約・変換する。「このラズパイがなければ車は走行不能だ」とMarc氏は断言する。ラズパイはインフォテインメント(カーナビや車載情報の表示システム)の制御も担い、EVらしいタッチスクリーン式のギアセレクターも実装した。さらに「ラジオブリッジ」と呼ぶ受信モジュールをCANバスに接続し、スマートフォンなどから加速・ブレーキ・ステアリングを遠隔操作できる仕組みも組み込んでいる。


Raspberry Piを搭載したインフォテインメントシステムには、タッチスクリーン式のギアセレクターが備わっている

製作で最も時間がかかったのは、各部品がCANバス上でやり取りするメッセージの「解読」だ。自動車メーカーは通信プロトコルの仕様を外部に公開しないため、バス上を流れる膨大なデータを観察しながら、たとえばハンドブレーキを引くたびに変化するフレームを繰り返し手動で特定するという地道な作業を続けた。「カーマニアのコミュニティが解析結果をフォーラムに公開していることもあるが、それでも多くは自分たちで解読しなければならなかった」とMarc氏は明かす。

当初はいきなり本物の車に手を入れるのではなく、木の板の上に部品を並べたプロトタイプで通信の検証を行い、動作を確認してから実車への搭載に進んだ。ソフトウェアは関数型言語Elixirで開発し、IoTフレームワーク「Nerves」を使ってラズパイ向けのファームウェアとして書き込む方式を採用した。開発サイクルが短くなり、チームが使い慣れた言語で開発できたという。

18ヶ月をかけて自走と遠隔操作を実証したチームの次の目標は、自動運転への対応だ。Raspberry Pi公式マガジン第165号にも掲載されている。

試作の様子。異なるメーカーのパーツを組み合わせ、板の上で実験を行った

関連情報

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Silver VW station wagon with blue geometric decals parked on an empty tarmac, driver door open under a cloudy sky.

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