
NHK放送技術研究所(技研)は2026年5月21日、目が疲れにくい自然な3次元映像を表示できる「ライトフィールド方式」のヘッドマウントディスプレー(HMD)の新試作機を開発したと発表した。独自の光学系によって光学系の奥行きを従来比79%削減し(49.5mmから10.5mm)、大幅な薄型化と高精細化を同時に達成した。2026年5月28日〜31日に開催する「技研公開2026」で展示する。
一般的なVRゴーグルの多くは左右の目に異なる映像を見せて立体感を生み出す二眼方式を採用しているが、この方式では「目の疲れ」という根本的な課題があった。画面上の物体が奥行き方向に動いても、レンズで拡大されたディスプレーにピントが固定されたままのため、「視差で感じる奥行き」と「目が実際にピントを合わせている距離」が一致しない。これが長時間のVR使用で生じる疲労や不快感の原因だと考えられている。
ライトフィールド方式はこの問題を根本から解決するアプローチだ。ライトフィールド(光線場)とは、物体から放たれて目に届く光線の集まりを指す。この光線群を忠実に再現することで、実世界で物を見るときと同じように目が自由にピントを合わせられる。見たい位置に焦点を動かすことができるため、長時間の視聴でも疲れにくい自然な3次元映像が表示できると期待されている。
従来のライトフィールドHMDは装置が大きいことが課題だった。ディスプレーとレンズアレー(微小なレンズを平面状に並べた光学素子)で一度空中に中間像を作り、それを接眼レンズで拡大する仕組みでは、2つのレンズの間に約4cmの空間が必要だった。今回の新技術では、レンズアレーと接眼レンズを接触させて実質的に1枚の光学素子として機能させることで、中間像を作らずに目へ直接3次元映像を届けることに成功した。光学系の奥行きは49.5mmから10.5mmへと79%削減された。
高精細化については、高精細マイクロディスプレーを採用しつつ、光源からの光線の経路を追跡して映像を生成する「レイトレーシング技術」で3次元映像の元となる要素画像をリアルタイムに高速生成することで、高精細な3次元映像をリアルタイム表示できることを確認した。
技研は今後、3次元映像のさらなる高精細化と表示範囲の拡大に向けた改良を進め、教育・医療・エンターテインメントなど幅広い分野での活用を目指すとしている。

