生きたゴキブリに注射器を載せて瓦礫の下へ、豪の大学が成功率72%で実証

豪クイーンズランド大学(UQ)の研究グループが、生きたゴキブリに電子回路と注射器を載せ、瓦礫の下にいる人へ薬を届ける仕組みを試作した。目標から15cm以内に位置を取れた場合の注射成功率は95%、移動から注射までを通した成功率は72%だった。ニューサウスウェールズ大学(UNSW)の生体医工学者との共同研究で、成果は2026年8月27日に発表された。

使ったのは北クイーンズランドに生息するオオモグリゴキブリだ。体が大きく力があるため、機材を積む余力がある。背中には着脱式の操縦装置を取り付け、電気で脚の動きを促して遠隔から進む方向を指示する。そのうえでカメラか、この種のために特注した遠隔起動式の自動注射器のどちらかを積む。研究グループはこれを救急救命士とサイボーグを掛け合わせた「Paraborg」と呼ぶ。

昆虫にセンサーを載せて災害現場を探索させる研究は、20年ほど前から続いている。ただしこれまでは、生存者を見つけるところまでが役割だった。UQのThang Vo-Doan博士は「見つけた後、実際に助けられるか」を次の段階として設定したと説明する。倒壊した建物や洞窟のように、救助隊が入れない狭い空間に薬を届けられれば、救出までの時間を稼げるという発想だ。

難しいのは位置決めだという。博士課程のHai Nhan Le氏は、目標まで移動し、正確に位置を取り、注射できるだけ安定していなければならないと述べる。95%という数字は目標の15cm以内に到達できた場合のもので、そこまでの移動を含めると72%に下がる。試験はUQの機械鉱山工学科の実験室で実施し、人を対象とした試験には至っていない。

電極とマイクロチップを取り付ける際はゴキブリに麻酔をかけ、ハーネスを外せば通常の個体と同じだけ生きるとしている。同じ研究室は2025年にサイボーグ化したカブトムシで壁面の登坂を実証しており、今回のゴキブリはより大きく機材を積める点で選ばれた。Vo-Doan博士は、1台のロボットにすべてをさせるのではなく、昆虫ごとの得意を活かして任務別に装備を変える方向を示す。

ニューサウスウェールズ州消防救助隊で自然災害・人道支援を担当するTim Hassiotis警視は、救助隊が入れない空間に安全に入り、負傷者を見つけて救急医療を届けられるなら、都市型の捜索救助で有用な道具のひとつになりうると評価する。研究グループは、カメラを積む個体と医療機器を積む個体を組み合わせた群れの展開を長期的な目標に掲げ、資源が確保できれば5年から10年で実際の現場に投入できる可能性があるとしている。論文は学術誌「Advanced Science」に掲載された。

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