3Dプリントできる人工組織を米大学が開発、製造速度は従来比1万倍

米テキサス大学オースティン校の研究チームが、人間の組織のように分子を選り分ける性質を持ち、3Dプリンターで造形できる材料を開発した。極小の水滴を数十億個も詰め込んで作る手法で、従来の水滴を使う手法と比べて製造速度が1万倍以上に向上した。成果は2026年7月23日付の学術誌『Nature Materials』に掲載された。

開発した材料は、膜で仕切られた水滴の集まりでできている。1ミリリットルあたり数十億個という密度で水滴が詰まり、隣り合う水滴の膜同士がつながる構造を持つ。人間の組織で細胞が並ぶ様子に近く、この膜がふるいの役割を果たして特定の分子だけを通す。腎臓や腸が必要なものだけを取り込む働きと同じだ。

これまでも同種の材料の研究はあったが、作れる大きさが実用に届かなかった。従来の手法は水滴を1つずつ並べていくため、時間がかかりすぎたためだ。チームは、性質の異なる2種類の油を混ぜて水滴を作り、遠心分離機で押し固める工程に切り替えた。混ぜて回すだけの単純な作業で、数分あればデシリットル規模の量ができる。

この材料は、押し出し方式の3Dプリンターで水中に直接造形できる。生体適合性のある材料から作れるため、新しい組織や臓器を育てる足場としての用途が見込める。柔らかく外部の刺激に反応する性質から、手術や災害救助、人が入れない危険な環境で動くソフトロボットの素体にも向くとしている。

膜に組み込む分子を変えると、材料の性質そのものが変わる。ある種のタンパク質を加えた場合、神経組織のようにイオンの電流を通した。人間の脳を模した計算システムの構築につながる可能性がある。別のタンパク質を加えた場合には、廃水に含まれるアンモニウムイオンだけを他のイオンと区別できた。石油やガスの採掘に伴って出る水や生活排水が対象で、膜で不要なイオンをふるい分ける仕組みは、廃水から鉱物イオンや栄養分を回収して再利用する道につながる。

研究は10年以上続いてきた取り組みだが、突破口を開いたのは大学院生のAida Fica氏だった。形成に時間がかかることと構造が不安定になることに何年も悩まされたのち、学会で耳にした話をきっかけに乳化という手法に行き着いた。同氏は、必要なのは基本的な実験器具だけで、どの研究室でも実施できる単純で拡張可能な工程になったと述べている。共同研究者のManish Kumar教授は、この分野に取り組みたい研究者を訪問や議論を通じて支援すると呼びかけた。

チームは現在、米エネルギー省の高等研究計画局エネルギー(ARPA-E)との共同研究で、リチウムやレアアースの抽出への応用を進めている。技術と派生する用途については、同大学の技術移転部門を通じて特許を取得済みだ。

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