
米ペンシルベニア州立大学を中心とする研究チームが、肌に直接塗って乾かすと電極として働く導電性インクを開発した。心臓や筋肉、脳の電気信号を記録でき、心臓の異常の早期把握や義手の制御などにつながる可能性がある。成果は2026年7月13日付でProceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)に掲載された。MITや中国科学院蘇州生物医学工程技術研究所も参加した国際チームが手がけた。
体に貼る従来の電極は、工場などで作った部品を肌に載せるため、肌と電極の間に空気の隙間ができ、信号の精度が落ちやすい。研究チームは、複数のポリマーと酸性の添加剤を水に溶かしたインクを作り、この隙間の問題を解いた。塗った直後は糊のような状態だが、10分ほどで乾いて電極になる。ドライヤーで乾燥を早めることもできる。ほぼ透明のインクに食用色素を混ぜれば好きな色や柄に描けるため、化粧用のフェイスペイントのように扱える。
電極は多孔質の構造を持ち、元の長さの150%以上まで伸ばしても切れない。汗や体毛を通しやすいため肌になじみやすく、電気信号もよく拾う。インクで描いた電極は、体に貼った小型モジュールの端子につなぎ、集めた信号をBluetoothでコンピューターに無線送信する。心電図(ECG)や筋電図(EMG)、脳波(EEG)の記録に使える。
実証では、塗った電極が日常生活の動作のなかで12時間にわたり心電図を記録できた。運動中でも密着と精度を保ったという。前腕の筋電図を読み取ってロボット義手に送り、手を触れずに義手を動かす操作も示した。
研究チームは、心臓発作の兆候の早期把握や、義手の制御、脳波の読み取りといった用途を見込む。キャラクターの柄などに描ける点は、子どもの検査で不安を和らげ、受け入れられやすくする効果があるとみている。チームはこのインクの仮特許を出願した。

