麻痺した手が4年ぶりにフォークを握った、筋電で意図を読む空気圧グローブ

ドイツのミュンヘン工科大学(TUM)の研究チームが、麻痺した手の握る力を補う、柔らかい空気圧式のグローブを開発した。前腕の筋肉が出す電気信号から握ろうとする意図を読み取り、グローブ内の空気クッションをふくらませて指と手首の動きを助ける。事故や神経の病気で手が麻痺した人の支えになりうる。成果は学術誌Nature Machine Intelligenceに掲載された。

これまで手の動きを補う外骨格の多くは固い骨組みでできており、関節の自然な動きを妨げ、着け心地の悪さも課題だった。柔らかい布とクッションで組めば、体への当たりが軽く、負担を抑えられる。手が握れなくなると、コップを持つ、食器を扱うといった日々の当たり前の動作が難しくなるだけに、こうした支援の意味は大きい。

グローブは布製で、その外側に空気クッションを付け、合わせて13本のチューブで空気を送り込む。クッションのふくらみで指を1本ずつ曲げ伸ばしし、手首も回して、コップや皿、フォークやスプーンを握れるようにする。物を運んでいる途中で落とさないよう、別の動きセンサーで腕を動かす動作を捉え、握りを保ち続ける仕組みも組み込んだ。

握る意図の読み取りには、筋電図(EMG)を使う。前腕に付けたセンサーが拾う微弱な信号を機械学習で解析し、97%の精度で「握ろうとしている」という意図を言い当てる。開発を主導したJohn Nassour氏は、意図を高い精度で予測する点と、その動きを的確に支えるハードの両面で賢い仕組みだと説明する。

効果は、実際の患者との検証で示された。ほとんど手が動かせなくなったALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者は、親指の付け根の関節をわずかに動かせるだけだったが、前腕に残る長母指屈筋という筋肉の信号を的にしぼって増幅することで、4年ぶりに自分でフォークを持てた。使い始めて数分でグローブを操れるようになったという。Nassour氏は、手ごろな材料でグローブを手縫いしており、高額な研究用の装置に比べて安く作れる点を強調する。低所得の家庭や脳卒中の後遺症に悩む人にも届けたい考えで、対象を脳卒中の後遺症や、事故で末梢神経を痛めた人、力の入らない弛緩性の麻痺などへ広げる計画だ。

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