米UCSDとトヨタの北米研究所、水に5分浸すと剥がれる電池の電極用のりを開発

米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)とトヨタの研究拠点Toyota Research Institute of North Americaなどの研究チームは、フッ素を含まず、水で扱えるリチウムイオン電池の電極用バインダーを開発した。使い終わった電極を水に浸して5分かき混ぜると、電極の材料が金属箔から剥がれる。論文は2026年10月9日付で学術誌「Nature Communications」に掲載された。

電池の電極は、電気をためる粉末状の材料を金属箔に塗って作る。バインダーは、粉末どうしと箔をつなぎ留める「のり」にあたる。論文によると、現在の製造はフッ素を含む樹脂のPVDFと、有毒な溶剤のNMPに頼っており、溶剤を回収する工程が要る。リサイクルでは、PVDFの残りが材料から分けにくく、高温で取り除くと有害な副生成物が出る。

チームが開発したバインダー「PCC」は、ポリアクリル酸とカルボキシメチルセルロースを1対1で水に溶かし、クエン酸でつないだものだ。UCSDによると、カルボキシメチルセルロースは食品や紙に使われる植物由来の材料だ。クエン酸が2種類の樹脂を複数の種類の結合で網目状につなぎ、水に溶ける樹脂だけでは足りなかった強度を補う。

チームは、リン酸鉄リチウムの正極で性能を比べた。初回の放電容量は1g当たり160.2mAhで、PVDFを使った正極の160.5mAhとほぼ同じだった。1000回の充放電の後も容量の75.7%を保ち、PVDFの正極は400回を過ぎてから容量の減り方が速くなった。黒鉛の負極と組み合わせた薄型のパウチ型電池では、1600回の充放電で容量の76.4%を保った。チームは、ニッケルを多く含む正極や黒鉛、シリコンの負極でも動作を確かめた。

リサイクルの試験では、チームは使用済みの正極を20mLの水に入れて5分かき混ぜ、リン酸鉄リチウムをアルミ箔から剥がした。PVDFの正極は、NMPで2時間かき混ぜる必要があった。回収したリン酸鉄リチウムからフッ素は検出されず、チームは再生した材料で作り直した電池の性能も確かめた。負極から回収した黒鉛は、1g当たり約344.8mAhの容量を420回の充放電にわたって示した。

チームが試算したライフサイクル評価では、PVDFを使う電池と比べて、製造時の温室効果ガスの排出が6.9%、エネルギーの消費が9.3%減った。リサイクル時はエネルギーが10.0%、温室効果ガスが7.2%減り、電池1個当たりのフッ素の投入量は約30%減る。論文は、この試算は条件を置いた比較で、工場の設計や規模によって値が変わるとしている。

筆頭著者のJiao Lin氏と、UCSDのZheng Chen教授は、この技術に関する特許を出願している。論文は誰でも無料で読める形で公開されている。

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