
米ユタ大学の研究チームが、層を積み重ねずに3次元の微細な構造を一度の露光で作る造形法を発表した。設計した形の光の像をレーザーで樹脂の内部に一括で結び、約20秒で固める。層ごとに作る従来の方法で数時間かかっていた工程を、大きく縮める。成果は2026年6月4日付の学術誌Nature Communicationsに掲載された。
微細な立体を作る方法には、これまで大きな悩みがあった。層ごと、あるいは点ごとに光を走らせて固める方式は精密だが遅く、逆に一度にまとめて固める方式は速いものの細部が粗くなりがちだった。とくに厚みのある樹脂では、奥へ進むほど光がぼやけ、細かい形を保つのが難しい。速さと細かさは、両立しにくい関係にあった。
今回の鍵は、光の進み方を細かく設計した「位相マスク」と呼ぶ光学素子だ。光を3次元的に整えるこの素子にレーザーを当てると、狙った立体形状に対応する光の分布、いわばホログラムが樹脂の中に立ち上がる。光が届いた部分がまとめて固まるため、層と層のつなぎ目がなく、内部が空洞の形も一度に作れる。マスク自体は、濃淡をつけたリソグラフィで作る。位相マスクは動かない固定の素子で、いったん作れば同じ形を繰り返し素早く焼き付けられる。
Rajesh Menon教授とDajun Lin氏らのチームは、この方法で直径6マイクロメートルほどの細い管の集まりを造形した。管の強度を調べたほか、毛細管現象で液体を運べることも示した。作った構造の縦横比は120対1を超え、800×800×720マイクロメートルの範囲で立体を組める。格子のように繰り返しの多い立体を得意とし、複数の形をベルトコンベヤーのように次々と作れることも確かめた。
速さと細かさを両立しにくかった従来の壁を、光を立体的に設計するという発想で越えた点に、この研究の意義がある。用途として見込むのは、微小な光学部品や、生体組織を育てる足場、微小な機械要素などだ。研究は米国立科学財団(NSF)とユタ大学が支えた。チームは、この技術で本格的な3次元の造形をめざし、開発を続けるとしている。

