
電子回路を、インクも液体も使わずにその場で印刷する。そんな手法が、宇宙に近い微小重力の環境で初めて実証された。Auburn University(オーバーン大学)とNASAマーシャル宇宙飛行センターの研究チームが、インクを使わない乾式の積層ナノ製造(Dry-ANM)で、微小重力下で銀と銅の導電構造を作ることに成功した。成果は学術誌npj Advanced Manufacturingに掲載された。
一般的な3Dプリントや回路の印刷は、あらかじめ用意したインクや粉末を材料に使う。これに対し研究チームの手法は、固体の材料にレーザーを当ててその場で純粋なナノ粒子を作り、吹き付けながらレーザーで焼き固めて回路を描く。インクや液体を扱わずに済むため、液体が漂って扱いにくい無重力の環境に向くと見込む。
実験は、2日間のパラボリックフライト(放物線を描いて飛び、短時間の無重力をつくる飛行)で実施した。1回25秒の微小重力区間を50回つくり、そのなかで銀と銅のナノ粒子を生成、堆積、焼結して導電構造を作った。同じ条件で地上でも作製し、微小重力の影響だけを比べられるようにしている。
宇宙でのオンデマンド製造には、長期のミッションで必要な部品をその都度作れれば、予備部品の在庫や補給を減らし、修理を早められるという利点がある。リサイクルした材料から必要な電子部品を作る道も開ける。研究を率いたのはAuburn UniversityのMasoud Mahjouri-Samani氏で、乾式ナノ印刷のスタートアップNanoPrintekを創業している。インクに頼らない回路製造は、宇宙に限らず、地上でのオンデマンドな電子部品づくりにも応用が期待できる。

