
セキュリティチップのオープンソース基盤「Pavona」が2026年5月26日に公開された。国際的なセキュリティ標準化団体GlobalPlatformが主導し、ZeroRISCのDominic Rizzo氏がガバナンスボードの議長を務める。RISC-Vをベースとした設計IPとリファレンスデザインを公開しており、IoT機器からデータセンターまでを対象に、認証取得ずみのセキュリティチップを設計できる環境を提供する。MetaやQualcomm Technologies、TenstorrentのJim Keller氏など12社・機関が創設メンバーとして参加した。
最大の特長は、本番品質のポスト量子暗号(PQC)スタックを世界で初めてオープンソースで提供したことだ。「ハードウェアルートオブトラスト」(機器のセキュリティ全体の信頼基点となるチップ)コンポーネント「OpenTitan」を起点に、TSMC 3nm(N3)で量産試作済みのリファレンスデザインを2種類提供する。新標準PQCアルゴリズムのML-KEMおよびML-DSAでは、組み込みシリコン上で6〜9倍の処理性能向上と最大動作周波数の36〜75%改善を実証済みだという。
設計データはGitHubで公開されており、入門ガイドに沿えば1時間以内にリファレンス設計のビルドとシミュレーションを試せる。ガバナンスはオープンソースプロジェクト「Yocto」や「Zephyr」を参考にした設計で、有料メンバーが運営委員会に参加する一方、技術上の意思決定は独立した技術運営委員会が担う。新規コントリビューターへのゲートキーピングは設けず、非営利・学術機関向けのAssociateティアも用意する。
セキュリティチップは、あらゆるデバイスに必要でありながら製品の差別化要因になりにくいインフラ的な部品だ。AIブーム、米欧政府が2030年を期限に求めるポスト量子対応、欧州サイバーレジリエンス法(EU Cyber Resilience Act)という3つの動向が採用を後押しする。オープンソース化が進めば、IoTデバイスや組み込み機器の安全設計の敷居が下がる可能性がある。

