【レビュー】モーター不要でプレートを自動交換、A1 mini用「PlateCycler C1M」

1台の3Dプリンターで同じ部品を何個も作りたくても、造形が終わるたびにプレートを取り外さなければ、次の印刷には進めない。造形速度や性能が向上する一方で、印刷の合間に人の手がかかるという課題は残ったままだった。

Chitu Systemsの「PlateCycler C1M」は、Bambu Labの小型3Dプリンター「A1 mini」に後付けし、ビルドプレートの交換を自動化するアタッチメントだ。ひとつの印刷が終わると造形物ごとプレートを取り外し、新しいプレートに交換して次のジョブを開始する。最大10枚までセットでき、人の手をかけずに連続して造形を続けられる。

本記事では同社からレビュー用の機器の提供を受けたうえで、使用感や気になるポイントを紹介する。既存のマシンに後付けするだけで利便性を高める、このユニークなプロダクトの使い心地を確かめてみよう。

目次

専用プレート4枚付属のアタッチメント型ツール

公式サイトより引用

Chitu Systemsは、中国の3Dプリント関連機器メーカーだ。FabSceneでは以前、同社のフィラメント乾燥機「FilaPartner E1 Filament Dryer」をレビューしている

今回紹介する「PlateCycler C1M」は、Bambu Lab A1 mini専用に設計された自動プレート交換機だ。通常価格はChitu Systems公式サイトで89.99ドル(約1万4000円)。Amazon.co.jpでは1万4999円で販売されている(記事執筆時点、セール価格を除く)。

内容物一式

製品にはPlateCycler本体と、自動交換に対応した専用PEIプレート4枚、組み立て用の六角レンチが付属する。プレートを追加購入すれば、最大10枚までの連続印刷に対応する。

アナログな動きでプレートを自動交換

公式のチュートリアル動画

セットアップに特別な工具は必要ない。同梱される六角レンチだけで、30分もあれば完了する。主な手順は下記の通りだ。

  1. ヒートベッドのケーブルカバーを取り付ける
  2. ヒートベッド背面に「プレートフック」を取り付ける
  3. 後方に、交換用プレートを重ねる「トレイ」を取り付ける
  4. 前方に、プレートを押し外す「イジェクター」を取り付ける
  5. イジェクターからワイヤーを引き回し、Z軸上部に固定する
  6. フィラメントの送りチューブを固定する「スプールチューブホルダー」を付け替える

仕組みは意外なほどアナログだ。ヒートベッド背面のプレートフックが、後方のトレイに重ねたプレートの爪を引っ掛け、ベッド上まで引き出す。印刷が終わると、今度は前方のイジェクターがプレートを押し上げてマグネットから外し、そのまま造形物ごと手前へ排出する。その後、新しいプレートがトレイから引き出され、次の印刷が始まる。

PlateCyclerのユニークなポイントは、プレート交換のために新たなモーターや電源を使わないことだ。ヒートベッドの前後移動や、ワイヤーを介した機構を利用し、A1 mini自身の動きをプレート交換へと変換している。プレートフック、イジェクター、トレイが動く様子は、ちょっとした「からくり」を見ているようで面白い。

プレートフックで爪を引っ掛け、トレイから次のプレートを引き出す。安定して動作させるには、トレイの高さ調整が重要だ。
イジェクターでプレートをマグネットから外し、造形物ごと手前へ排出する。

機械的な仕組みで動くぶん、取り付け後の微調整は重要だ。特に、プレートフックが次のプレートの爪を確実に引っ掛けるためには、トレイの高さを慎重に合わせる必要がある。

連続印刷データを簡単作成

PlateCyclerで連続印刷するためのデータは、専用のWebツール(https://platecycler.chitusystems.com/)で手軽に作成できる。

印刷データ作成用のWebツール
スライス済みのデータをアップロードすると、印刷個数や印刷後のクーリングタイムなどを指定できる。

まずは通常通り、印刷したい3DデータをBambu Studioでスライスし、3mfファイルを用意する。これをWebツールに読み込ませ、印刷したい個数や順番を指定するだけでいい。

各回のプリント自体はA1 mini単体で印刷するときと変わらず、印刷完了から次のジョブが始まるまでの間に、PlateCyclerによるプレート交換の動作が加わる。マルチカラーユニットを使う場合も特別な設定は不要で、普段の手順を大きく変えずに済む。

マルチカラー用のスライスデータも、フィラメントの設定とともに読み込まれる。
異なる形状のデータを複数読み込むと、それぞれの必要個数や出力順を個別に設定できる。

設定が終わると、複数の印刷ジョブとプレート交換の動作をひとまとめにした、連続印刷用の3mfファイルが出力される。あとは通常の印刷データと同じようにA1 miniへ送信すれば準備完了だ。

単色でもマルチカラーでもOK

連続印刷をする際は、あらかじめヒートベッドに1枚、後方のトレイに残りのプレートを重ねてセットしておく。印刷が始まると、1枚目への造形が完了した後、自動でプレートを交換して次のジョブへと進んでいく。

実際に動かしてみると、プレートがベッドのマグネットから外れたり、新しいプレートが吸着したりする際の音は想像以上に大きかった。初めてのときには、少し驚くかもしれない。

印刷完了後、自動でプレートを交換して次のジョブへ移行する。
排出されたプレートは前方へ落下するため、造形物の形状によっては、プレート同士が干渉することもある。

まずは3Dプリントのベンチマーク用データとして定番の3DBenchyを使い、2枚分の連続印刷を試した。印刷が終わったプレートは、造形物を載せたままY軸の手前側へ排出され、重力で落下する。

排出先は毎回ほぼ同じ場所になるため、造形物の高さや形状によっては、先に落ちたプレートや造形物と干渉し、次のプレート交換に影響することがある。複数枚運用するなら、本体前方に1段低い箱や受け皿を用意するなど、排出されたプレートの逃げ場を作っておくと安心だ。

2色使うマルチカラー印刷用のスライスデータを作成。
造形後のプレート3枚が重なった。

続いて、MakerChipをイメージした直径約40mmの円形パーツをプレートいっぱいに並べ、3回連続で印刷した。造形物が薄いため、排出されたプレートはそのままきれいに積み重なっていく。マルチカラーでの連続印刷となったが、こちらも問題なく完了した。

長時間・薄型・マルチカラー印刷との好相性

実際に使ってみて、役立ちそうなシチュエーションが見えてきた。

一つ目は、造形に時間がかかるパーツを続けて作りたい場合だ。数時間かかる造形では、終了時刻が外出中や就寝中に重なることも多い。そんなときでも、印刷完了後に自動で次のプレートへ切り替わるため、プリンターを止めずに稼働させ続けられる。

二つ目は、MakerChipのように、薄くてもプレート上の面積を取る造形物の量産だ。1回あたりの印刷時間が短くても、そのたびにプレートを交換するのは手間がかかる。名刺サイズのアイテムや薄型パーツなど、同じものを何度も作る用途では特に相性がよさそうだ。

色ごとにプレートを分けて印刷するイメージ図

最後に、色の異なる複数のパーツをまとめて造形する場合だ。通常、1枚のプレートの上に複数色印刷する場合、切り替えやパージで時間と余分なフィラメントを消費する。色ごとにプレートを分けて造形すれば、切り替えは最低限で済み、無駄なく必要なセットを回収できる。

パーツの微調整が必要なことも

最後に、気になった点も書いておきたい。

初期状態ではフック部分が上まで戻らなかったため(左)、パーツを解体したのち(右)、穴を大きくして再度組み立てた。

筆者の手元に届いた個体では、プレートフックのスプリングの戻りが悪く、取り付け後に所定の位置まで戻らないため、次のプレートをうまく引き出せないことがあった。公式サイトのトラブルシューティングを確認したところ、パーツの穴がきつすぎることが原因として挙げられていた。そこで一度分解し、手作業で穴を広げてから組み直したところ、正常に動作するようになった。

自分で調整すれば解決できる範囲ではあるものの、製品を使い始める段階でパーツの加工まで必要になった点は気になった。

プッシュブロックの取り付け位置と3Dデータ

また、ヒートベッド下部に取り付ける「プッシュブロック」という3Dプリント製パーツも、筆者の個体では固定がやや緩く、印刷中に外れてしまうことがあった。Printablesで同パーツのデータが配布されているので、自分で出力して交換することもできるが、わざわざユーザー側でパーツを作り直す必要があるのは、正直なところ手間に感じた。

まとめ|定番機種の効率を上げる選択肢

PlateCycler C1Mは、Bambu Lab A1 miniに後付けし、プレート交換と連続印刷を自動化できるアタッチメントだ。追加のモーターや電源を使わず、プリンター本体の動きを利用してプレートを交換するシンプルな仕組みが特徴となっている。

実際に使ってみると、組み立て後の高さ調整やパーツの微調整が必要になる場面はあったが、安定して動作する状態までセットアップできれば、印刷が終わるたびにプレートを交換する手間を減らし、夜間や外出中でも複数のジョブを続けて実行できる。排出されたプレートの受け止め方まで工夫すれば、プリンターの稼働効率をさらに高められるだろう。

同じパーツの量産はもちろん、薄型パーツを繰り返し出力したり、異なる色やデータをプレートごとに分けて印刷したりと、使い方の幅も広い。専用プレートが付属し、1万円台から導入できる価格帯を考えても、用途に合えば魅力的な選択肢だ。なお、今回紹介したC1Mに加え、Bambu Lab A1向けの「PlateCycler C1」もシリーズとして展開されており、機種に応じたチョイスも可能となっている。

取材協力:Chitu Systems

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ライター/編集者。大学で3Dプリンターと出会いものづくりの面白さに目覚め、デジタルファブリケーションの世界へ。卒業後、研究員として2年半ほど従事したのち、ものづくりを中心としたライターとして独立。
2023年には墨田区でファブ施設「京島共同凸工所」の運営をスタート。文章と場づくりを行き来しながら、街での生活を満喫している。工房での日々を綴った自主制作本「京島の十月」が販売中。

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