
1981年、IBMが初めて家庭・オフィス向けの「IBM PC」を発売した時に搭載された基本ソフトのひとつ「PC-DOS」。その大元になったMicrosoftの「86-DOS」と、PC-DOSの最初期版の設計図にあたるソースコードが、GitHubのリポジトリ「DOS-History/Paterson-Listings」で2026年4月21日に公開された。これまで一般に出回っていた最古のDOSソースコードは、Microsoftが2018年に公開した「MS-DOS 1.25」のもの。今回はそれより1年以上古い、PCの世界が立ち上がる瞬間を写し取ったソースで、誰でもダウンロードして読める。
公開されたソースは、DOSの開発者であるTim Paterson氏がアメリカにある自宅でずっと保管していた印刷物だった。Paterson氏はかつて、コンピューター史を研究するLen Shustek氏に「6インチ(約15cm)ほどの印刷物の山がまだ手元にある」と書き送っていた。そのメモを覚えていたのが、世界各地でレトロパソコンの保存活動をしている有志だ。オーストラリア在住の研究者Yufeng Gao氏とアメリカ在住のヴィンテージ・パソコン愛好家Rich Cini氏が2024年3月、Paterson氏に直接メールで打診したところ、本人から「86DOS.A86 v1.00(1981年4月28日付)の印刷物もある」という返信が届いた。

問題は、米西海岸のPaterson氏宅から東海岸のRich氏宅まで紙の印刷物の山をどう運ぶかだった。最終的に、Rich氏の友人で「Paterson氏宅から徒歩10分の距離に住む」Frank Ancona氏が直接訪問して印刷物を受け取り、空輸で6日かけて届けた。中身は、コンピューター用に切り目を入れた連続用紙で、10束、合計913ページ。Yufeng Gao氏とRich氏が中心となってページ単位で内容を文字に起こし、当時のままコンパイルできる状態に整えた。リポジトリは公開後10日で世界中の利用者から635のスター(GitHubでの「いいね」相当)と70のフォーク(複製)を集めている。
文字起こしの過程では、コンピューター史の認識を変える発見もあった。これまで「86-DOS 1.00」のバイナリと信じられてきたものが、実は次のバージョン1.01の修正がすでに当てられた状態だったこと。Microsoft社内の大型コンピューターに移す段階で、フロッピーからのデータ転送中に文字が抜け落ちた痕跡が残っていたことなどだ。今回の公開は、Bill Gates氏が2025年に手書きで書いたAltair BASICのリスト公開を見たYufeng Gao氏が、「DOSの誕生45周年(2026年)に合わせよう」と提案したのがきっかけとなった。


