英国の航空宇宙エンジニアが投石機で音速を突破、重力だけで4gの弾が秒速346mに

トレビュシェットには、原理からくる速度の上限がある。錘が落ちる勢いで腕を振り、遠心力で弾を飛ばす仕組みだが、その錘は毎秒9.81mを超える加速ができない。2mの高さから落とせば地面に届く時点で秒速6.2m、音速の2%にも満たない。錘をいくら重くしても落下そのものは速くならない。ゴムを使えば話は別だが、それでは重力だけで動く機械ではなくなる。

英国のTom Stanton氏は、この壁を6年かけて越えた。落下する40kgの錘だけを動力に、4gの弾を秒速346.4mまで加速している。時速に直すと1247kmで、音速の時速1234kmを上回った。打ち出しの瞬間にはソニックブームも確認された。

鍵は、錘の落下を腕の回転数に変換する比率にある。同氏は錘を3対1の滑車で吊り、腕が15回転する間に加速させる構造にした。ただし回転式にすると、弾を放つ瞬間の見極めが難しくなる。毎分2000回転付近で切り離す必要があり、許される時間の幅はおよそ2.5ミリ秒しかない。

腕は軽くて硬い必要がある。カーボンファイバーを自作のCNCフライスで削り出し、重さ116gに収めた。切削前に3Dプリントで試作したところ、スリングの張力で座屈することが分かり、引っ張られる側の肉を落として反対側を厚くする設計に改めている。空気を切る前縁を3Dプリントで足すと回転数が12%上がり、さらに手を入れた版では17.8%まで伸びた。スリングの取り付け部も金属部品を排して3Dプリントに置き換え、40%軽くした。

錘を巻き上げるドラムも作り直した。従来は1.7mまでしか上げられず、枠の高さを使い切れていない。テーパー形状を変えて大径側の巻き数を増やし、最終径を20%縮めたところ、1.9mまで上がるようになった。位置エネルギーは12%増え、音速に届くのに必要な効率は約46%まで下がった。

弾体も3Dプリントで作った。当初は10mmのボールベアリングを予定していたが、危険を避けて樹脂の球に替えている。回収できないため生分解性のフィラメントを選び、木立の向こうまで5kmほど何もない野原で撃った。40kgに6gの弾を組み合わせた回は毎分2336回転で時速1152kmまで届いたが、音速には82km足りない。50kgではスリングが切れ、ハブの掛け金が壊れた。そこで弾を6gから4gへ減らし、直径も縮めて抗力を削った結果が冒頭の記録になる。

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