
米Semtechは2026年8月19日、LoRa無線のトランシーバー「LR2022」「LR2012」の量産を始めたと発表した。2機種は2025年9月22日にオランダ・アムステルダムで開かれたThe Things Conferenceで発表されており、当時は2026年前半の量産開始を予定していた。これで同社の「LoRa Plus」シリーズは、量産段階のトランシーバーが3機種そろう。
LoRaは、消費電力を抑えたまま数kmの通信ができる無線方式で、電池で動かすセンサーや資産追跡の端末に使われてきた。ただし通信速度が遅く、送れるのは温度や位置といった小さなデータに限られていた。
2機種は、先行するLR2021と同じ第4世代のLoRa IPコアを積む。データレートはLoRaで最大125kbps、FSKでは最大2Mbpsに達する。同社によれば、低消費電力のまま短時間にまとめてデータを送れるため、画像や音声のファイル、無線経由のファームウェア更新(FUOTA)にも対応できる。独自の無線プロトコルで遅延を詰めたい用途にも使える。
LoRaWANやLR-FHSS、従来のOOK方式の機器との後方互換も保つ。LoRa Plusの各機種はいずれも、LoRaWAN、LR-FHSS、Amazon Sidewalk、Wi-SUN FSK、Wireless M-BUSに対応する。
3機種は用途で分かれる。LR2021はマルチバンドかつマルチプロトコルで、エッジAI向けにFLRCで2.6Mbpsを出す。LR2022はマルチバンドで、1つのハードウェア設計のまま地上の通信網と衛星を使う非地上網(NTN)の両方に対応する。地域ごとに基板を作り分けずに済む。LR2012はサブGHz帯に絞り、従来型の低消費電力無線とLPWAN向けに仕上げた。2025年9月の発表時点で、LR2012の受信感度は-142dBmとしている。
採用も進んでいる。米Zenner USAは検針端末「Stealth Reader Meter Interface Unit」にLR2012を選び、LoRaWANの性能と旧来のOOKとの互換、LR-FHSSによる衛星接続への拡張性を理由に挙げた。独Engelmann Sensorも次世代の計量機器向けに同じチップを採用し、最新のLoRaの機能を価格とのつり合いの取れた形で使えると述べている。
Semtechで無線ICのプロダクトマーケティングを統括するShahar Feldman氏は、サブGHzのセンサーノードから衛星につながるマルチバンドの追跡端末、複数の無線規格を扱うエッジAI機器まで、用途ごとにLoRa Plusのチップを選べるようになったとしている。同社は、世界で5億台を超えるLoRa機器が稼働していると説明する。
3機種は2026年8月26〜28日に中国・深圳で開かれるIoTE 2026、9月17〜19日にインド・ベンガルールのElectronica India、9月25〜26日にアムステルダムのThe Things Conferenceで展示される。

