チップの中身を赤外線で確認できる、ハッカーの祭典DEF CONの参加者バッジ

DEF CONは2026年7月31日、8月6日から9日まで米ラスベガスで開く情報セキュリティー会議「DEF CON 34」の参加者バッジを公開した。バッジの中心にあるのは、ハードウェア技術者のAndrew Huang氏(bunnieの名で知られる)が設計したチップ「Baochip-1x」だ。設計データの大半が公開されているうえ、手元のチップの内部を壊さずに撮影して公開データと照合できる。DEF CONは、会期が終わった後もセキュリティーキーやパスワード管理の機器として使えると説明する。

Baochip-1xは、台湾のTSMCの22nmプロセスで作った汎用マイコン向けのチップだ。演算には、仕様が公開された命令セットのRISC-Vに沿うVexriscvコアを350MHzで動かし、入出力の処理には700MHzのPicoRV32コアを4基割り当てる。電源を切ってもデータが残るRRAMを4MiB、作業用のSRAMを2MiB内蔵し、乱数生成器や暗号処理の回路、電圧を急に変える攻撃を検知するセンサーも収める。Huang氏がブログで最大の違いに挙げるのは、アプリごとにメモリーの使用領域を分けるMMUを載せた点だ。同じ性能帯のマイコンは領域を分ける仕組みを持たないのが通例で、同氏はRaspberry Pi Pico 2のRP2350とTeensy 4.1のiMXRT1062の間を埋める位置づけだと書く。

中身を確かめられるのは、チップの裏側のシリコンが露出したパッケージを使うためだ。近赤外線はシリコンを透過するので、裏から光を当てて反射を撮ると内部のトランジスターの並びが見える。Huang氏はこの手法をIRIS(Infra-Red, In-Situ inspection)と名付け、市販のUSB顕微鏡カメラを改造して自宅で試す手順まで公開している。チップのRTL(回路の動作を記述した設計データ)はGitHubで、オープンソースハードウェア向けライセンスのCERN-OHL-W-2.0のもとに置かれている。非公開なのはバス回路やUSBの物理層、PLLや電圧レギュレーターといった部分で、同氏はいずれもデータを加工せずに通すだけの「配線」に当たると説明する。

Baochip-1xは、Huang氏が2016年にEdward Snowden氏と取り組んだ「ハードウェアは持ち主を裏切らないと信じられるか」という問いから続く開発の延長にある。資金を集めずに製造できたのは、Crossbarが設計した22nmチップの空き領域に自分のCPUコアを相乗りさせたからだ。試作用ではなく量産用のマスクセットを使っており、Huang氏は2026年3月10日のブログで、数千個規模を販売できる見込みと評価ボード「Dabao」の予約受付を告知した。DEF CON 34は2026年8月6日から9日まで、ラスベガス・コンベンションセンターのWest Hallで開催する。

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