
スイス連邦工科大学ローザンヌ校の研究チームが、音を推進力に変える空洞を設計し、モーターも電池も積まない小型のロボットを動かしたと2026年8月14日に発表した。空洞の形と大きさで反応する音の高さが決まるため、スピーカーから出す音を切り替えるだけで、動かす部分を選べる。成果は学術誌『Science Advances』に掲載された。
土台にあるのは、瓶の口に息を吹きかけると音が鳴る現象だ。ヘルムホルツ共鳴と呼ぶ。開口部を空気が横切ると、内側に閉じ込められた空気が押し込まれたり押し返されたりを繰り返す。ある特定の高さの音では、この振動が強くなる。
研究チームが作ったのは、丸い形や釣り鐘の形をした中空の構造だ。音の波で内部の空気が揺さぶられると、押し出される空気は細い噴流としてまとまるのに対し、吸い込む側は広く拡散する。出入りのこの偏りが推進力を生む。音で物を浮かせる従来の手法とは異なり、装置自身が音を推力に変える点が違う。
材料を選ばないのも特徴だ。一般的な3Dプリント用の樹脂、ゴムのような弾性材料、ガラスのいずれでも作れる。
センチメートル大の実験では、空洞を最大3個備えた小舟を作った。それぞれ異なる高さの音に反応するよう調整し、押す向きが変わるように配置してある。スピーカーの音を変えることで動かす空洞を選び、舟を進ませ、障害物をよけさせ、あらかじめ決めた経路を自分でたどらせることにも成功した。
より小さい飛行体は、3Dナノプリントで作った。樹脂の構造そのものに微細な空洞を3つ組み込んだもので、こちらは人間の耳に聞こえない超音波で動かす。重さ150マイクログラムの型は、空洞から下向きに空気を噴き出してロケットのように上昇する。もう1つの型は空洞と小さな羽根を組み合わせ、羽根を毎分1万3000回転まで回してヘリコプターのような揚力を得た。
モーターも歯車も磁石も要らないため、3Dプリントの手法を選べば、いくらでも小さく軽くできる。筆頭著者で博士課程のJunsun Hwang氏は、さらなる小型化に耐える考え方だと述べる。研究室を率いるSelman Sakar氏は、音に反応する構造を1つの柔らかい装置の中に複数組み込み、それぞれ違う高さの音で曲げたり振動させたりする構想を挙げる。音に応じて形を変える機体が作れる可能性があるという。

