ISS「きぼう」の中をAIが歩く、スペースデータが研究基盤をオープンソース公開

スペースデータは2026年8月28日、AIエージェントの動きを手元のパソコンで観察できるシミュレーション基盤「SD-AgentFoundry」をApache License 2.0で公開した。同社CSOの兵頭龍樹氏が開発したもので、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」を再現した3次元空間の中を、画像を見て判断するAIが歩き回るデモが同梱されている。

大きく2つに分かれる。1つは言語モデルで動くエージェント20体を2次元の格子に置く2D版、もう1つは画像も扱える視覚言語モデルが3次元のデジタルツインを移動する3D版だ。どちらもクラウドのAPIを使わず、macOS、Windows、Linux上でOllamaを介してローカルのモデルを動かす。描画はGPUなしで済み、推論速度だけがマシンの性能に左右される。

2D版が観察の対象にするのは、集団の振る舞いだ。カフェや図書館といった場所の収容人数や混雑率を設定し、途中で火災を発生させられる。ただしエージェントに与えるのは位置、混雑率、火災の強度と距離といった数値だけで、「危険だから逃げる」という行動ルールも、「混雑している」という評価も与えない。警告がどう伝わるか、避けるのか集まるのかが、モデル自身の判断としてどう現れるかを見る仕組みになっている。

3D版はもう一歩、身体の側に寄る。USD形式のデジタルツインにエージェントを1体置き、その視点から見えるRGB画像と、タスクや現在位置、直近の行動履歴をまとめて視覚言語モデルに渡す。モデルは次の行動を自然言語で答え、シミュレーター側がその文章を読み取って移動や回転に変換する。出力をJSONのような決まった形式に縛らない点が特徴で、兵頭氏はこの自由な文章の解釈こそモデルごとの違いが出るところであり、その違い自体が観察対象だと書いている。

同梱のデモは「JAXAロゴを探して近づく」という課題を「きぼう」の中でこなす。きぼうのUSDデータ179ファイル、69MBがリポジトリに入っているため、追加のダウンロードは要らない。画面には空間全体を見下ろす半透明の表示と、右下にエージェントの視野が並ぶ。走らせるたびにモデルの生の応答、解釈された行動、行動前後の姿勢、推論時間、入力画像が記録され、なぜそう動いたのかを後から追える。

推奨するモデルの一覧は、あえて示していない。すぐ古くなるためで、手元にある視覚対応のモデルを試すよう促している。制約も明記されており、物理演算がないため把持や接触は扱えず、衝突判定は空間の境界だけで家具はすり抜ける。エージェント間の通信もない。行動は自然言語から解釈するもので方策として学習したわけではなく、解釈の失敗もありうる。同社は現行版をロボット制御の基盤ではないと位置づけ、シミュレーションの出力も人間の行動を検証済みの精度で予測するものではないとしている。技術論文はarXivに掲載されているが、査読前のプレプリントである。

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