
アポロ計画で人類を月へ送ったコンピューターには、宇宙飛行士が数字を打ち込んで操作する装置が付いていた。DSKYと呼ばれる表示装置と数字キーの組み合わせで、本体とは別の遠隔入出力装置にあたる。Mikeyme1998氏は、これを実物と同じ寸法で作り直した。初めてRaspberry Piを買ったのも、この製作のためだった。
土台になっているのはVirtualAGCという別の集団の成果だ。アポロ誘導計算機の動きを丸ごと再現したもので、同氏はそれをDSKYの中に収めたRaspberry Piで動かしている。歴史上は本体と表示装置が別々だったが、単一基板のコンピューターのおかげで1つの筐体に収まった。
外側の再現に手間をかけている。筐体は3Dプリントで、1960年代に実物を機械加工するために使われた図面をNASAの記録から起こして作った。塗装と仕上げの色も当時のものに合わせている。画面と警告灯、キーボードはArduinoを介してRaspberry Piにつながり、Pythonのスクリプトでやり取りする。
同氏によると、同じことを試した人は以前にもいた。ただし多くが途中で止まっており、手順の記録も不十分だった。そこで歴史的な正確さを重視し、他の人が同じものを作れるよう記録を整理することに力を入れた。GitHubには3Dプリント用の部品、Arduino側の周辺回路、Raspberry PiとPC側のプログラム、参考資料の4種類を置き、製作の手引きも付ける。ライセンスはGPL-3.0を採る。
手引きにはアポロ誘導計算機とDSKYの歴史も書いた。アポロ誘導計算機は集積回路を使った最初期の例で、ある時期には世界で作られた集積回路の7割を吸い上げていた。計算と記憶の仕組みには、今から見ると風変わりな技術が使われている。
作るのは簡単ではなかった。同氏は、はんだ付けと試作に何カ月もかかったと書いている。子どもが生まれる前だったからできたともいう。現在は組み立てやすくした第2版を進めており、専用基板を起こすことで、数回の午後で組める形を目指す。歴史的な宇宙船の手動操縦装置にも手を広げている。

