
英Singular Photonicsが2026年9月10日、光子を1個ずつ数えるイメージセンサー「Litavis」を発売した。撮像と時刻計測、ヒストグラムの作成を画素の中で同時に行える点を、同社はSPAD方式で世界初としている。
SPADは単一光子アバランシェダイオードの略で、光子が1個入ると雪崩のように電流が流れる素子だ。暗い場所でも光を粒として捉えられるため、距離計測や蛍光の観察に使われてきた。スマートフォンの測距センサーやLiDARにも入っている。ただし従来の構成では、検出した光子の情報をすべて外部の処理装置へ送る必要があり、画素数と測定回数が増えるほどデータ量が膨らむ。
Litavisはその処理の一部をチップの中へ入れた。256×256画素で光子を数え続けながら、64×64のマクロピクセル単位ではピコ秒の分解能で光子の到着時刻を記録する。1回の励起で複数の光子が届いた場合も、それぞれを別の時間区分へ割り当てられる。
画素の中でヒストグラムも作る。届いた光子の時刻の分布をその場で集計するので、外へ出るデータは生のイベント列ではなく統計になる。同社は、これにより転送量と遅延が減り、消費電力も下がるとしている。強度、時刻、ヒストグラムの3つを同時に取れるSPADセンサーは初めてだという。
この分布を使うと、通常の画像では得られない情報を取り出せる。蛍光を当てた物質が光を出し終えるまでの時間を測る蛍光寿命イメージング、粒子の動きを散乱光のゆらぎから調べる動的光散乱、量子センシングなどが対象になる。
設定はソフトウェアから変えられる。取り込みの条件やタイミングの調整を、基板を作り直さずに切り替えられるため、同じセンサーで用途の違う機器を作れる。同社が挙げる用途はマシンビジョン、ロボティクス、深度センシング、分光、科学計測、医用イメージング、量子技術、産業自動化と幅広い。
Singular Photonicsはスコットランドのエディンバラに拠点を置く。CEOのShahida Imani氏は、世界各地の企業と研究機関からすでにまとまった量の先行注文を受けていると述べている。価格と供給の時期は公表していない。

