
ブラザー工業は2026年11月5日、名古屋大学と共同で開発した「びびり振動診断技術」を実用化したと発表した。金属などを削る切削加工で起きる「びびり振動」の特性を診断し、振動が起きにくい加工条件を示す。同社の工作機械「SPEEDIO」シリーズの「S300Xd2」「S500Xd2」「S700Xd2」に、「びびり診断サポート」機能として搭載している。
びびり振動は、切削加工の最中に工具や材料が激しく振動する現象だ。名古屋大学によると、振動は一度大きくなり始めると非常に大きな変位にまで育ち、加工した面の仕上がりを悪くするほか、工具や工作機械を傷める。部品の表面には模様や凹凸が残る。これまでは工具の切り込みを小さくして避けるのが一般的だったが、加工に時間がかかり、特に量産では生産性の低下が問題になっていた。
今回の技術は加工中に工作機械のサーボシステムなどから取り出せる複数の情報を使う。それらの情報から、振動の原因になっている工具や材料などの動きの特性を割り出し、びびり振動が起きにくい主軸の回転速度などの条件を候補として示す。名古屋大学によると、従来の技術と異なり、示した安定な条件と比べて、今の加工条件がどの程度安定しているかも評価できる。生産技術者は候補の中から、より加工の能率が高い条件を選べるため、名古屋大学は製品の品質を保ちながら生産性を上げられる可能性があるとみる。
ブラザーの製品ページでは、びびり診断サポートはオプションの機能として載っている。波形のデータをPCのアプリで解析し、推奨する主軸の回転速度を示す仕組みだ。名古屋大学によると、示された条件を生産技術者が採用した例では、びびり振動の発生を抑えられた。同大学は量産の加工でも同じ効果を見込む。ブラザーは加工の品質を保ったまま、より効率的な加工条件を設定できるよう支援する機能と位置付ける。
研究には名古屋大学大学院工学研究科の早坂健宏准教授と社本英二教授、ブラザー工業の浅利直宏氏らが参加した。技術は特許(第7721944号)を取得している。ブラザーは今後、対応する機種を順次広げる。名古屋大学によると、既存の機種と今後発売する機種への搭載を進めている。ブラザーは名古屋大学との共同研究のほか、同大学の学生を対象にした奨学金も設けている。

