
アイスクリームのなめらかさを出す海藻由来の添加剤が、粘土や砂を3Dプリントで壁に変えるーーそんな研究結果が発表された。米コロラド大学ボルダー校のWil Srubar教授らが、掘削した自然の土にアルギン酸ナトリウムをわずか0.12%加えるだけで、印刷可能で従来より25%強い建材を作れることを示した。コロンビア大学との共同研究で、成果はNature Communicationsに掲載された。
自然界ではシロアリが巨大な蟻塚を、スズメバチが精密な巣を、ハニカムワームがサンゴ礁状の構造を、いずれも合成接着剤やセメントなしに作る。研究チームはこうした生物の建築に着想を得て、天然のバイオポリマーが土の印刷性にどう影響するかを体系的に調べた。
アルギン酸ナトリウムは海藻から抽出される多糖類で、食品や医薬品の増粘剤として広く使われている。この物質を粘土や砂に加えると、粘土粒子の表面電荷が変化して互いに反発し、均一に分散したまま流動する混合物ができた。3Dプリンターのノズルを詰まらせず、押し出した後はすぐに固まって形を保つ。このバランスが従来の土の3Dプリントでは難しかった。
コロラド州ゴールデン近郊の花崗岩採石場から採取した自然土に0.12%のアルギン酸ナトリウムを混ぜた配合で、無添加の土に比べて25%高い耐圧力と33%速い印刷速度を達成した。厚さ8mmの壁を大きく傾けた角度で積層する試験にも成功している。この技術は2026年のヴェネツィア建築ビエンナーレで展示された作品「Earthen Rituals」にも使われた。
土の壁は室内の湿度を調整し、大気汚染物質を吸着し、断熱性も備える。建設現場では基礎工事で大量の土が掘り出され、多くが埋め立てに回される。掘削土を建材に転用できれば、廃棄物の削減と環境負荷の低減につながる。Srubar教授は同じ枠組みで他のバイオポリマーも試験できるとしており、強度や耐久性をさらに高める研究を続けている。

