
ロボットやドローン、電気自動車(EV)のモーターには、強力な永久磁石が欠かせない。その多くはネオジムなどのレアアース(希土類)を使い、原料の生産は中国に約9割が集中する。供給が止まれば、ものづくりの現場は一気に苦しくなる。米新興企業のNiron Magneticsは、レアアースをまったく使わない永久磁石でこの構図を崩そうとしている。
同社の磁石「Clean Earth Magnet」の材料は、ありふれた鉄と窒素だけだ。鉄と窒素を結びつけた窒化鉄を使い、希少な元素に頼らない。室温での磁力の強さ(最大エネルギー積)はネオジム磁石に一歩譲る。だがネオジム磁石は高温で性能が落ちやすいのに対し、窒化鉄の磁石は熱に強く、モーターが熱を持つ実際の使用環境では差が縮まるという。
この磁石は、研究室の試作から実際のモーターへ移りつつある。2026年1月のCES 2026では、インドの電動二輪メーカーMATTERと組み、磁界を走行状況に合わせて変える「可変磁束モーター」の試作機を公開した。同じCESでは米Bimotalとも組み、EVの駆動系やロボットのアクチュエーター向けのモーターを披露している。自動車大手Stellantisとは、2025年10月にモーター開発の協業を始めた。
強い磁石は、ロボットの関節やドローン、3Dプリンターのモーターまで、ものづくりのあらゆる場所で使われる。その心臓部がレアアースに縛られなくなれば、価格や入手のしやすさは変わってくる。窒化鉄の磁石が量産の段階へ進めるかどうかが、次の焦点になる。

