
電子顕微鏡には、大きく2つの種類がある。表面に電子を当てて、跳ね返ってきた電子から像を作る「走査型(SEM)」と、薄い試料に電子を通し、裏側に置いたセンサーで透けた電子をとらえる「透過型(TEM)」だ。後者はレントゲンに近く、試料の内部まで見える。MakerのProjectsInFlightは、手持ちのSEMを改造してTEMとして使えるようにする様子を公開した。
このSEMは、もともと廃棄寸前のものを引き取って直したものだ。SEMをTEMにする発想自体は新しくない。試料の後ろに電子を反射させるアダプターを置けば、以前から似た撮影はできた。ただ、市販のアダプターは予算申請をためらうほど高く、一方で構造は単純なので、自分で作れる余地があった。
一番の課題は、試料ホルダーと装置内部の壊れやすい部品とのすき間だった。標準のホルダーでは14mm弱しかなく、作業の余地が乏しい。そこでアルミを削って薄い試料板を作り、電子を反射させる鏡と、不要な電子を遮るシールドを置く空間を確保した。旋盤やフライス盤で加工し、真空に引いたチャンバーの中から鏡の角度を調整できる工夫も加えた。

最初に金のナノ粒子を撮ると、シールドの遮りが甘く、不要な電子が回り込んでいた。シールドを高くして遮りを強めると、像は大きく良くなった。続いて、寿命を終えた蚊の羽を撮影すると、その繊細な構造がはっきり見えた。次は、下処理に手間のかかる生物の細胞をTEMで撮るのが課題だという。
高価な専用機材や市販アダプターを使わずに、家庭の工作環境でTEMの撮影に届いた点が、この改造の見どころだ。電子光学の基本は古くから大きく変わっておらず、原理を押さえれば、こうした応用が個人の手でも組める。

