岩雪崩の実験装置に、スイスの研究チームが山を100日かけて3Dプリント

スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)とWSL雪・雪崩研究所(SLF)の研究チームが、2025年の岩雪崩で村がほぼ埋まったブラッテン周辺の地形を577分の1で3Dプリントし、実際に水と砂と粘土を流して崩れ方を測る実験装置にしている。ETH Zurichが2026年9月に公表した。

模型はレッチェンタール谷のブラッテン周辺で、上部のクライネス・ネストホルンへ続くビルヒヒン谷まで含む。約500×500mmの部品56個を印刷して組み立てた。印刷には約100日かかり、組み上げた表面は12平方メートル、外形は最大5.4×4.5mになる。設置場所はダボス近郊の旧軍用地下壕で、空間の制約から実際とは鏡像に組んである。

印刷しただけでは使えない。研究チームは組み立てた模型に塗装を施しており、SLF研究助手のHervé Vicari氏は、実際の地形に近い表面の粗さと光学特性を得るために欠かせない工程だと説明する。模型の印刷はVicari氏の発案だという。

実験は単純な手順で進む。水、砂、粘土を計算した割合で混ぜ、模型の最上部に置いた箱に入れ、ハッチを開ける。混合物は傾斜部(4.5×2m)を流れ下り、その先の水平部(最大6m)に堆積する。1回に流す量は最大48L、質量は1トンまで扱える。流れる様子をカメラ、レーザー、3Dスキャナー、各種センサーが記録し、流下の深さ、速度、到達距離、堆積、衝撃を数値にする。力の計測板と間隙水圧センサーも組み込める。

目的は数値モデルの検証にある。研究グループは、土石流から岩雪崩までアルプスの土砂移動を計算機上で再現するモデルを開発しており、将来は州や自治体の担当者がこれを使って集落や道路の危険度を判断できるようにしたいとしている。研究を主導するETH ZurichのJohan Gaume教授は、モデルが信頼できるものであるためには、制御された実験で徹底的に試す必要があると述べている。

装置は使い回せる設計になっている。下部の構造は別の地形に載せ替えられ、侵食、障害物への衝突、到達距離、対岸の斜面をせり上がる動きなども調べられる。Gaume教授は、現在は地形の曲率が流れに与える影響に関心があると話している。

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